柔らかい日常


遥がプリノと共に仕事をこなす様になって大分経つ。
遥がプリノの部屋に行くのも毎日の日課となっていた。

不意に書類に向かっていた遥が小さく声を上げる。プリノは不思議そうに遥へと視線を向けた。


「昴の部屋の修理、申請出てる。許可しちゃっていいだろ?」
「えぇ、お願いします」
「了解ー。あの大きさなら何ヵ月か掛かるだろうなー」


壁一面の穴を思い出しながら遥は呟く。プリノは実際に壊れた壁を見てはいないのか、曖昧な返答をするが遥は特に気にした様子もなく書類を見ていた。

何かを思い出したのか、そういえば、と小さく呟いたプリノに、遥は書類から顔を上げ、プリノを見る。


「あの二人、陛下を連れ戻しに行くらしいですよ」
「…連れ戻しに?」
「えぇ。遥さんも一緒に行かれますか?」


プリノの問いに、遥は首を横に振る。意外な返答に、プリノは軽く驚きはしたが気付かれぬ様にと平静を保つ。
遥はプリノの様子等、気にすることもなく小さく笑みを溢す。


「今会ったらダメだからな」


遥の言葉の真意も掴めないが笑みが自嘲的にも見え、プリノは首を傾げるしか出来ない。何か考えることがあるのかもしれないが、少しでも会いたい気持ちがあるのならば行けばいいのに。
だが、プリノにそれを言う勇気はなかった。
遥の考えを知ることが出来なかった。


「プリノこそ、」


遥が小さく呟く。
遥の顔には満面の笑みが浮かべられていて、プリノは益々訳が分からなくなる。
ハテナを飛ばすプリノに対して遥は楽しそうに唇に弧を描く。


「昴のこと、好きなんだろ?」
「……な…!!」


予想外の言葉に、プリノは顔を真っ赤にすると持っていた書類をバサバサと床に落とす。焦って拾い集めようとしては転ぶプリノの様子を、呆気に取られた顔で見ていた遥は、暫くしてからくすくすと笑い出した。
なんてからかい甲斐のある性格だろう。


「わ……わわわわ私はべべ別にっ!」
「分かった分かった」
「…え?」
「プリノが可愛いってことはよーく分かった」
「…遥さんっ!」


遥の笑い声とプリノの叫ぶ様な声は廊下まで響き渡り、廊下を歩く隊員全てが微笑ましく部屋の扉を一瞥しながら通り過ぎていく。




to be next...
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