事件発生まであと一分


立ち入り禁止の部屋の前で、プリノを呼びに来た兵は止まった。この部屋には実に色々なモノが保管してある。まさか、紅とキャロルが此処で問題を起こしたとでもいうのか。そこまで常識から外れているとは思わない。曲がりなりにも信頼している二人だ。


「何をしてるんです。ここは立ち入り禁止…」


プリノが勢い良く扉を開いた。
中には紅とキャロルの他にも数人の兵が居た。その中の一人が慌てた様子でプリノの方へ向かって走ってくる。


「プリノ、危ない!!」


咄嗟にプリノの盾になろうとしたが、間に合わなかった。プリノは男の兵にぶつかられて倒れ込んだ。


「プリノ……っ!?」


そして、その兵は勢いそのままに、プリノに駆け寄ろうとして体勢を前のめりにしていた私にもぶつかってきた。それはもう勢い良く。油断していたから、大分よろめきはしたが、プリノの様に転ぶまではいかなかった。
紅が顔を引きつらせて此方を見ている。
そんな顔をして怒らなくても。いや、むしろこの場合は、それくらい避けろよと私に向けて思っているのだろうか。


「スイマセン!!出来心でーっ」
「出来心で済むか!!そこへなおれー!!」


紅の怒りを買ってしまったらしい兵達は散り散りに走りながら、謝罪の言葉を叫んでいた。
その全員に向けて怒鳴る紅を横目に、キャロルが私へ寄ってくる。


「大丈夫ですか?怪我は?」
「私?いや、私は全く」
「それは良かった。雷が落ちなくて済みます」
「……もう、そんな雷、落ちることもないだろ」


成る程。過去に何度も落とされた雷が、二人の中にしっかり残っているのか。今はもうそんな事はないと、分かっているだろうに、身体は勝手に、というやつか。


「っと、私よりもプリノだ」


急いでプリノが倒れた方へ身体を向ける。
光を通さないカーテンの向こう。此処には、あまり良くないモノが保管してある。人目に触れぬ様、態々部屋の奥へ、しまい込んだモノが。


「プリノ?怪我はないか?」
「おい大丈夫か?」
「将軍ー?」


返事がない。
ソレの前で、ピクリとも動かない。


「プリノ?どっか痛いのか?」
「おーい、将軍ー?もしもしー?」


何度問い掛けても、反応しない。
紅とキャロルと三人で顔を見合わせる。もしかして、今回のこと怒ってるのか。
プリノに近付いて行き、正面へ回り込む。座ってプリノの顔を見る。目を合わせてみて、自分の目を疑った。
プリノの瞳が、おかしい、これは――


「プリ、ノ……?」
「あのぅ…将軍…?もしかして怒って…」


キャロルがゆっくり近付いて来て、プリノの肩に触れた。
プリノはそれに反応して、振り返る。


「わん」


おおよそ、プリノの発言とは思えない言葉が、間違いなくプリノの口から発せられた。





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