再会


壁に背を預け、昴は空を見上げた。結局、外まで見に来てしまったのだ。昴は己の行動に嘲笑する。自分には関係ないと思ったはずなのに。今更なんだ、と思ったはずなのに。


「…そういえば、今日は梅見てないな…」


ふと昴は一日に一回は見る自分の使い魔というには可愛すぎる小さな犬を思い出した。あの子は一体何処に行ったのだろうか。


――カサカサッ


不意に、昴の目の前にある木が揺れた。
そちらをぼーっと見やる昴の視界に、小さな白い固まりが入った。先程まで思考の中にいた使い魔だ。


「こんな所にいたんだ。おいで、梅」


梅に向かって手を伸ばし、近付いてくるように促す昴に、梅はちょこちょこと近付いていく。梅が完全に木の間から姿を表した時、梅より更に奥の辺りからカサカサと先程より大きな音が聞こえた。
風ではない気配に昴は梅から木の方へと視線を移した。


「早いよ、梅!ちょっとくらい待ってくれても…」


聞こえてきた声に昴は目を見開いた。
聞いたことがある。
いや、そんな程度じゃない。
毎日飽きるくらい聞いていた。
あの日から毎日聞きたいと思っていたんだ。
やっと聞けた、懐かしい声なんだ。


「…遥…」


顔を見なくても間違えるはずがない。
小さく言った昴の言葉が聞こえていたのか、木の間から出てきた人物は昴を真っ直ぐ見つめていた。


「…昴…?」


何で外に居るのか、何て疑問が遥の中に生まれたが、そんな事を悩んでも仕方がない。


「…梅を探しに来たの「…遥っ!」


遥の言葉を遮り、昴は遥の腕を強く自分に引き寄せた。予想外の展開に踏ん張る事の出来なかった遥はそのまま昴の腕の中に収まる。


「昴…?」


己を力一杯抱き締め、何も喋ろうとしない昴に声を掛けた。その声は小さくて、相手に聞こえているかも分からなかったが、遥は静かに返事を待つ。


「…死んだのかとまで、思った…」


小さな声で昴は言った。
その消え入りそうな声に、遥は小さく頷き、昴の背中をポンポンと軽く叩く。腕を回してみて、昴が小刻みに震えていることが分かった。


「生きてて…よかった…」
「…ごめんな、心配させて」


遥の言葉に腕の力を緩め、昴はゆっくりと遥から離れた。
顔をきちんと見ることなく勢いで動いてしまっていた為、やっと遥の事を見た気がする。幾分大人らしくなってはいるが、面影は残っている。毛先の軽い癖まで変わっていない。


「昴は、全然変わってないな…」


ふと遥は口を開いた。
昴が遥を見ていたのと同時に、遥も昴を見て昔を思い出していたのだ。


「遥も、大人になったけど変わらないよ」


小さく微笑む昴に、遥も微笑み返す。

あぁ、この笑顔だ。
夢で見た、懐かしい笑顔。彼女は間違いなく、会いたいと願った人物で。

やっと、会えた。




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