失くした君を想う
ーーいいから…オレはいいから、行けっ!!
叫んだ言葉を聞いて振り向こうとした瞬間、腕を思い切り掴まれ、前を向かされた。目の前の敵に集中しろ、と言われる。刀を振り続けながら、居るはずの仲間を探す。視線を必死に動かす。だが、何処にも見えない。さっきまで其処に居たのに。さっきまで其処で、共に刀を振るっていたのに。
「おいっ何処だ…!!!おいっ……ーー!!!!」
*
「…っ!はぁ…はぁ…」
久々に、昔の夢を見た。
昔の、失くした仲間の夢を。
あの戦いの後、死体の山を、敵の山を、そして仲間の山を探し続けたが、見付からなかった。どんなに探しても、どれだけ探しても、たった一人の大切な仲間を見付けられなかった。
記憶は風化するなんて、よく言ったモノだ。
声は、もう忘れた。
顔も、もう覚えてはいない。
よく笑っていた。よく泣いていた。
仲間内で、一人歳下だったからか、大切な先生の兄弟だったからか、大事にされていた。気付いたら周りに人が集まる、天性の人誑しだと、嫌味を込めて誰かが言っていた。争いを嫌う奴だった。敵を斬る度、泣きそうな顔をしていた。むしろ、泣いていた、気がする。帰還しては、還らぬ仲間を思い、屍になった敵を思い、一人で泣いていた。
下らない事ばかり覚えているもんだ。
忘れたことばかりなのに、喪失感は無くならない。ポッカリと空いた胸の穴が、塞がらない。
「んだよ…クソが」
気分悪ぃ。寝直すか。
布団を被り直し、目を閉じる。
悪夢なんて忘れて、個人的には一発当てる愉快な夢を見たいもんだ。
昔なんて忘れて…
「そういや…」
名前、なんつったっけ。
確かーー
「ーー茜」
20160206
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