便所で生まれるのは
トイレに籠ってたところにやってきたハム子。意味不明なことを喚いていたが、何やらヤバイ男に引っ掛かってた様だ。眼鏡の瞳孔開いた天人と対しながらも、ハム子を抱える。
さらっとハム子を連れて出ていこうとトイレを扉に手を掛ける。
「オイオイみんなで仲良く連れションですか…便器足んねーよ…」
扉を開けた瞬間に見えた男の山に、口角がヒクリと上がる。よくもまぁ、あの短時間でこんだけ天人を集めたもんだ。ハム子抱えてどうやって逃げるか、つか、三人はどうなったのか。聞ける雰囲気でもないし、一先ず逃げる方法を考える。
「オラッちゃちゃっと歩かんかイ!!って、姉ちゃん元気過ぎるだろ!?もっかい嗅がせろ!」
「いいからっ…はっ…新八くんと、神楽ちゃん…離せっ…!!」
「!?」
声の方、野郎共の山の向こうには、連れて行かれる神楽と新八。そして、二人を必死に庇う様に歩く茜が居た。新八は一人で歩けない程にフラフラとしているし、神楽は足取りこそしっかりしているが、視点が定まっていない。茜は何やら様子がおかしい。男の一人が、茜の口に布を押し当てようとするのを、茜は必死に抵抗していた。
「新八!!神楽!!茜!!何…オイ!どーしたんだ!?」
声を掛けても、新八も神楽も反応しない。茜だけが俺の声に反応して、バッとこっちを見た。だが、その行動のせいで、男への抵抗が減り、結果謎の布を思い切り口に押し当てられていた。
「てめーらァァ!!何してんだコラぁぁ!!アイツらに何しやがった!!」
「ぎ、…とき……ぎんときっ!?後ろ!!」
俺を見て、焦った茜が野郎の腕を力強く押し飛ばし、叫ぶ。後ろ、と言われて振り向くと、さっきの天人が刀を持って向かってきていた。
「っ!待てっオイ!今行くからな!!」
一度、愛刀で野郎の刀を防ぎ、茜の方を見る。何故か泣きそうな顔をした茜が、見えた。身体をそっちに向けて進めようとした時、茜が声を上げた。意識も朦朧としているのか、あまり大きい声ではなかった。でも、俺の耳に確りと届いた。
「いいから……こっちは私が守るから、行って…!!」
――いいから…オレはいいから、行けっ!!
何処かで聞いた声と、茜の声が、被って聞こえた。
身体が一瞬固まったところに、天人の攻撃がくる。左肩に剣先を突き付けられ、勢いのままに窓ガラスに身体を叩き付けられた。
そういや、名乗ってないのに茜に名前を呼ばれたな、なんてどうでもいい事が頭を過った。そしてそのまま、地上に向けて落ちていく間に、俺の意識は飛んだ。
20160213
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