汚れたものばかり
「ふんばれ、オイ」
死体の山の中を、一人の仲間を背負って歩く。
「絶対死なせねェから。俺が必ず助けてやるからよ」
背中に向かって声を掛ける。ザッザッと、自分の歩く音しか聞こえない。
「捨てちまえよ。そんなもん背負ってたらてめーも死ぬぜ。どーせそいつァ助からねェ。てめーにゃ誰かを護るなんてできっこねーんだ。今まで一度だって大切なもんを護りきれたことがあったか?」
死体が話す。無意識に足を止めてしまった。
「目の前の敵を斬って斬って斬りまくって、それで何が残った?ただの死体の山じゃねーか。てめーは無力だ。もう全部捨てて楽になっちまえよ…」
耳を貸してはいけない。目を見てはいけない。例えそれが事実を話そうが、今、この手で救える命を護る。それだけだ。
「お前に護れるものなんて何もねーんだよ!!心底大事だった奴も護れなかったくせに!!」
背中に背負った仲間が、骨になっていた。驚いて手を離そうとすると、ふわりと骨が揺らぎ、薄茶色の髪を携えた男になった。
「護ってくれなかったじゃないか、オレのこと。あの日、オレのこと、何で見付けてくれなかったんだよ、銀時」
「……茜…」
俺の背中から降りたソイツは、俺を真っ直ぐに見てくる。
「護ってくれるって、戦いに出る前に約束したよな?」
「茜、俺は…!」
「なぁ、銀時、また、オレを見捨てんのか…?」
茜の顔が、今にも泣きそうなモノになった。
「――――っ!!」
*
「……茜っ!!」
ガバリと起き上がると、其処は知らない部屋だった。
何処だ、ここ。何で俺はこんなとこにいんだ。
――ガラッ
「ガラにもなくうなされていたようだな…昔の夢でも見たか?」
「ヅラ?なんでてめーが…」
襖を開けて現れたヅラに頭がついていかないから、言われた言葉を思い返す。
昔の夢。茜。泣きそうな、茜の顔。何処かへ連れて行かれる新八と神楽。変なクスリ嗅がされて、それでも抗う茜。
「そうだ!!」
思い出した。俺は、助けに行かなきゃいけないんだ。
左腕を支えに身体を起こそうとするが、ズキリという痛みが襲う。勢いが良かったせいで立ち上がれないまま布団に頭から突っ込んだ。
ヅラが呆れた様に息を吐いた。ヅラ曰く、どうやら、身体はボロボロらしい。ハム子に至っては麻薬中毒で内側がボロボロだと。やっぱりそっちに手ェ出していやがった。めんどくせえ依頼を受けちまった。
ヅラは麻薬を根絶やしにするべくあの辺りをウロチョロしてた様で、まあ運良く助けられたわけだ。
「…というか、お前はなんであんな所にいたんだ?」
「というか、アイツらは一体なんなんだ?」
「宇宙海賊“春雨”。銀河系で最大の規模をほこる犯罪シンジケートだ!」
ヅラの疑問に、質問で返す。ヅラはさして気にした風もなく真面目な顔で俺の質問に答える。すげぇなこいつ。どんだけ真面目チャンだよ。
「貴様がそれほど追いつめられる位だ…よほど強敵らしい。時期尚早かもしれんな」
ヅラからの堅苦しい説明も貰えたから、もう此処には用はない。さてと、と立ち上がり、近くに掛けてあった服を取る。
「オイ、きいているのか?」
「仲間が拉致られた。ほっとくわけにはいかねェ。それに…」
「それに?」
パサリと羽織を肩に掛け、思い出すのは、一人の今にも泣きそうなあの顔。
「茜が、一人で戦ってんだ」
「……茜が?お前、気付いていたのか?」
ヅラが驚いた様に声を上げた。気付いてたのか、って今の今まで気付かなかったとは言いづらい。つか実は顔も忘れてたとかマジで言いづらい。
「ん?てめー、茜に会ったのか?」
「昨日、万事屋の前ですれ違ったのさ。一瞬別人だと思ったが、俺の名前を呼んだのでな。何か事情でもあったんだろう」
「んでもよく分かったな。アイツ、女の格好してたじゃねぇか」
「何を言うか、銀時。茜は昔から女だろう」
「………は?え?はあああ?」
んな馬鹿な。だってアイツ、オレって言ってたし、ずっと男だったじゃん。部屋とか一緒だったし、皆で一緒に吉原行かなかったっけ。ってか、あれ、俺アイツの前でとんでもないことしたことあんだけど、マジで女?ずっと女?
「まあ、気付いていたのは俺くらいだったがな」
「マジかよ…」
いざ救出、という前に、何やらどっと疲れた様な気がする。俺の気のせいではないだろうが。
20160213
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