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「姉ちゃん、まだ意識があるのかい?」
フラフラとする頭を必死に抑えて、声の方に目を向ける。
眼鏡の天人と、カエルの様な容姿の天人が、此方を見ていた。ズルズルと身体を引き摺り、新八くんと天人との間に身体を割り込ませる。私を見ていたカエル天人が、ニヤリと怪しく笑う。
「この女にも嗅がせているんだろう?」
「エエ。あの二人より大分多く嗅がせているはずです」
「……面白い」
カエル天人が手を伸ばしてくる。避けようと頭では思っているけれど、身体が上手く動かない。前髪を掴む手を、振り払うことすら出来ずに、上へと引っ張られた。
カエル天人の顔が近付く。
「余程頑丈な様だ。春雨で頂くとしようか。第七師団が頑丈な女を欲しがってたはずだ」
「は、なせ…っ」
「…生意気だな」
ガツン、勢い良く床に叩き付けられた。フラフラな頭に鈍痛が響くが、お陰で少し意識がハッキリとした。身体を、倒れている新八くんの身体に預けて、天人二人を睨むが、可笑しそうに下卑た笑みを返される。満足に抵抗出来ないからと、甘く見られているのだ。
私が、どう思われようが、どう扱われようが、何処に連れて行かれようが、それはどうでもいい。
神楽ちゃんと、新八くん。
この二人をどうにかこの場から逃がして、彼の元へ返さなければ。
彼の大切なモノを、彼の元へ。
「……ん…とき」
大切な彼に、大切なモノを。
必ず、護るから。
「女を縄で縛れ。この二人の始末はどうつける?」
「奴等の拠点を聞き出して潰しますよ。もうこれ以上仕事の邪魔はされたくないんでね」
「首謀者は恐らくあの桂とかいう男だろう。奴等は幕府にまで牙をむく凶犬ゆえ、あなどるなよ」
「……かつ…ら…?」
カエル天人が言う“かつら”が誰を指すのか、薄々と分かったけど、ここで知り合いだと気付かれると更に厄介な事になりかねない。
天人達は私達が攘夷志士だと思い込んでいる様だし、何も知らない二人を追及されても話すことなんかないし、それを口が堅いと勘違いされたら最悪だ。
――ウィーン
「陀絡さん、ちょっと」
徐に扉から現れた天人は、眼鏡の天人を呼んだ。どうやら変な人達が訪問しているらしい。様子から、招かれざる客であることは容易に分かった。陀絡と呼ばれた天人は対応を他の天人に任せ、頑丈そうな手錠を一つ持って私の前に座った。力強く腕を取られ、手首にソレを付けられる。抵抗しようとするけど、全く力が入らない。
後ろ手に手錠を付けられ、床に乱暴に投げられた。
「っ…」
「そう睨むな」
「二人を…はなして…!」
「頑張るねェ。こいつ等には聞くことがあるんだ。その願いは聞けないな」
陀絡は新八くんを近くに居た天人へ渡し、神楽ちゃんを連れて出て行った。カエル天人はその様子を一瞥し、部屋を出ていく。私は一人、残された。新八くんは、一人で歩けない。神楽ちゃんはずっと目を閉じていた。大丈夫だろうか。二人とも、天人の話からするに、私よりも嗅がされた変な薬の量は少ない筈だ。上手く逃げてくれるだろうか。
新八くんの連れていかれた方へ、身体を何とか起こして向かう。扉から外を覗くと、天人が何かを囲む様に群がっていた。何処にこんなに居たのか聞きたくなる位多い。
「神楽ちゃん!!」
新八くんの声が聞こえた。
やはりと言うか、あの天人の山の向こう側から。あの中に入って行き、新八くんを助け出すことが、今の私に出来るだろうか。
上の方から聞こえる声に、新八くんが返事をしている。
「てめーらのアジト教えろって言ってんだよ!!桂の野郎はどこにいんだ!!」
知らない声が、叫んだ。新八くんが、詰問されているんだろうか。このまま、私は聞いているだけなのか。目の前で大切なモノを傷付けられて、それで私はいいのか。
「……ダメに、決まってる」
動け、少しでも早く。
動け、一歩でも多く。
動け、動け。
「……動けっ!」
足に力を込める。天人に向かって、倒れるくらいの勢いで突っ込んで行く。予想外の衝撃だったのか、ぶつかった天人はよろけて、近くに居た天人は何事かと場所を開けた。其処に上手く滑り込んで、新八くんの元へと行く。新八くんの目の前で彼に向けて凄んでいる天人に体当たりして、新八くんから遠ざけた。
「茜さん!?」
「二人に、手を出すな……!!」
自分でも驚く程に、低い声が出たと思った。
20160222
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