心まで飾れ
桂、桂と騒ぐ天人を見て、新八くんに視線を移した。どうやら意識はしっかりしているみたいだ。身体がフラフラな私なんかより、動ける筈だ。退路さえ確保出来れば、新八くんは何とかなるだろう。問題は神楽ちゃんだ。上で眼鏡の天人に捕まっている。あれは、人質だろう。落とされたくなければ、話せ的な。この場所から神楽ちゃんを助けに行くのは、流石に厳しい。どうする。どうすればいい。必死に頭を働かせるけど、身体同様、そろそろ限界の様だ。
「……桂、小太郎を、探してるんでしょう」
口を動かすことさえ、辛くなってきた。
「私達は、攘夷志士じゃ、ない。……でも、個人的に、桂小太郎とは、知り合いよ」
「茜さん!?何を…!?」
「…私は何処にでも、ついていく。桂を誘き出す、囮にだって、なってあげる。だから、だから…」
眼鏡の天人を見る。
ニヤリと、口端を上げて、笑っている。
「二人を、離せ」
周りの天人が上からの言葉を待っているのか、動かなくなった。新八くんが後ろで動いたのが分かった。新八くんを確認しようとしたら、新八くんが口を開くのが見えた。
「茜さんは連れて行かせない!!神楽ちゃんを離せ!!ここは侍の国だぞ!!お前らなんて出てけ!!」
「新八、くん…?」
折角、回らない頭を必死に回して出した言葉を、新八くんにあっさりと翻された。驚いて見た新八くんの瞳は、しっかりと前を見据えていた。
「侍だァ?そんなもん、もうこの国にはいねっ…」
「いないわけないじゃない」
侍。バカだ、私は。新八くんのその言葉に、自分の考えがダメダメだったと思い知らされた。
目の前に居た天人の顔を思い切り蹴り飛ばす。あまり威力がなかったからか、天人は後ろに居た天人にぶつかって、身体を立て直した。
「侍に喧嘩売るなら、最後まで正々堂々。…常識でしょ」
「てめェ!このアマああ!!」
「うるさい、騒ぐな…!」
向かってくる天人を蹴り飛ばしては新八くんの元へ位置を戻して体勢を立て直す。手が使えないし頭は回らないし身体は言うこと聞かないし。全く思い通りにならない状況だけど、護るべきものの為に力を振るう。それが、昔、私の決めた自分の心。それを今の今まで忘れてたなんて。
上に居る神楽ちゃんを見て、今まで目を瞑っていた彼女と、目が合った。
「神楽ちゃん、待ってて…!直ぐに助けるから!」
私の言葉に応えたのか、ニカッと何やら企む含み笑いをした神楽ちゃんは、思い切り眼鏡の天人の顔を蹴った。神楽ちゃんの身体を支えていたのは、天人の刀一本だったから、蹴りの勢いそのままに、神楽ちゃんは落下していく。
「神楽ちゃ…!!」
「足手まといなるのは御免ヨ。茜姉、ありがとう。バイバイ」
焦って声を上げる新八くん。
一瞬、何が起こったのかわからずに神楽ちゃんを見ていると、ふわりと、風に乗って懐かしい匂いがした。
「大丈夫、新八くん……」
「え…?」
「宇宙一の“侍”が来たから、大丈夫」
「待てェェェ!!」
私の言葉を掻き消す程の大きな声が下から聞こえてきて、無意識に口角が上がる。
「待て待て待て待て待て待て待てェェェ!!」
ドドドドと激しい足音と共に、ソレは私と新八くんの目の前を通りすぎ、思い切り壁に激突した。
カラカン、と目の前にロープと繋がれたフックが落ちてきた。
「…いでで。傷口ひらいちゃったよ」
もくもくと衝突した時の勢いで上がった煙の中から、間の抜けた声が聞こえてきた。
「あのォ、面接会場はここですか?こんにちは、坂田銀時です。キャプテン志望してます。趣味は糖分摂取、特技は目ェ開けたまま寝れることです」
「銀さん!!」
「、ぎん…とき…」
むくりと立ち上がった人影が、間延びした声のまま、何故か自己紹介をした。坂田銀時。其処には、どこぞの海賊っぽい服を着た、彼が立っていた。
20160222
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