逆に恥ずかしい

ああ、夢だ、と直ぐに気付いたのは目の前にいた銀時が、昔の格好をしていたから。
昔の仲間が沢山、楽しそうに騒いでいる。明日の戦の前の、最後の宴のつもりだからだ。銀時も、酒瓶片手にフラフラとやってきて、何故か私の隣に座ったのだ。


――どうした、銀時?


聞いてみて、銀時は酔っ払いの笑顔を向けてくるだけだった。
そうだ。そのまま、何故か私にも酒を呑ませようとしてきて、それを必死に阻止して、そして、戦の話をしたんだ。私は自分を犠牲に仲間が助かるなら、それでいいと思っていた。確か、そんなことも言った。そしたら銀時に怒られたんだ。空になった酒瓶でポカンと頭を殴られて、それなら俺が護ってやる、と言われた。理由を聞いた。そう、何を意味の分からないことを、と聞いた。

銀時は、何て答えたんだっけ――



「……ねぇ、……姉、茜姉…」
「…ん……か、ぐら、ちゃん…?」


うっすらと意識が覚醒した。
重たい目蓋を開くと、今にも泣きそうな神楽ちゃんが居た。名前を呼ぶと、パアッと笑顔に変わって私の顔を見て、手に持っていた手拭いをわたわたと取り落としながら立ち上がり、勢い良く襖を開いて飛び出して行った。


「銀ちゃァァァァん!!茜姉、目が覚めたアル!!!」
「うっせぇなぁ、ちったァ静かにしやがれ」
「何アルか、その言い方!!嬉しくないのかよ!!!」


神楽ちゃんと銀時の会話が聞こえて、そっちを見ようと身体を動かしてみたけれど、何だか上手く動かない。よくよく思えば頭も何だかポワポワしていて、変な感じだ。とりあえず布団の中から何とか起き出そうと必死にもがいていると、ふわりと、布団から懐かしい匂いがした。

――あれ、もしかして、この布団って

気付いてしまったら急に恥ずかしくなってきて、動けなくなった。ドカドカと足音を立てて隣の部屋からやってくる銀時に見られない様に顔を隠したいけど、でも布団で顔を隠すと余計に意識してしまいそうでそれも出来ず、どうしていいかと慌てているところで、銀時が私の顔を覗き込んできた。


「おォ、起きたな…ん?…大丈夫か?熱でも出たか?」
「えっ、いや、あの……大丈夫、です…」
「銀ちゃん、茜姉を困らすなヨ天パのくせに」
「いや、天パ関係ねェだろ!?何で心配しただけでその言われ様ォ!!?」


銀時と目が合って、思わず反らしてしまった。銀時と神楽ちゃんの会話はすごく面白いのに、素直に笑うことすら出来ない。何を今更こんなに気まずくなっているんだ。昔の夢を見たからか。昔と今の自分がこんなにも違うからか。
ガシガシと銀時が頭を掻いているのが動きで分かった。チラリと視線だけを銀時へ向ける。また、銀時と目が合った。


「神楽、ちょっと新八ん家行ってこい」
「新八にも伝えるアルか!分かったネ!」
「違う。今日は新八ん家泊まってこい」
「何でアルか?…まさか、動けない茜姉に手を出すつもりアルか!?そんなことさせないヨ!!」
「違ェよ!!大人にゃ込み入った事情があんの!!」
「そんなの知らないヨ!!」

「ふふふっ」


二人のドタバタな会話に思わず笑みが溢れてしまった。
二人が会話をピタッと止めて、私を見てきた。神楽ちゃんは可愛い笑顔で此方を見ているし、銀時も口許に軽く笑みを浮かべている。


「ごめんなさい、可笑しくて、つい…」
「茜姉はやっぱり笑うと美人ネ!」
「ありがとう、神楽ちゃん。神楽ちゃんはとっても可愛いよ」
「ヒャッホォォォイ!聞いたアルか、銀ちゃん!!」
「あーはいはい、聞こえてますよー」


耳をほじりながら、銀時は神楽ちゃんの頭を掴んで制止させている。顔は呆れているけど、何だか楽しそうだ。銀時が楽しそうだと、私も楽しい。クスクス笑いながら二人を見ていると、銀時にじとっと視線を送られた。神楽ちゃんを万事屋から新八くんの家に行かせるのを手伝えと言っているのだろうか。銀時には早く私に確認したいことがあるんだろう。私も話さなきゃいけないと思ってるし、最初は銀時だけに聞いてもらいたい。うーん、と悩む。まずは身体を起こすことから始めよう。ふん、と腕に力を入れて起き上がろうともがいていると、銀時が然り気無く身体を支えてくれた。こういう優しさは昔から変わらない。ズルい。


「神楽ちゃん、あのね」
「どうしたアルか?何か欲しいアルか?」
「私、彼と大事な話をしたいの。だから、二人きりにしてもらえないかな?」
「むむむ!銀ちゃんズルいネ!茜姉のお願いを私が断れないと分かってて!!」
「んァ?俺は何も言ってないだろ」
「神楽ちゃん、」
「分かったアル!!!今日は茜姉に免じて行って来るネ!但し!!茜姉に手を出したらマジで許さないからなクソ天パ!!」


神楽ちゃんは、叫びながら万事屋を出ていった。部屋に銀時と二人きりになった私は、何故だか急に緊張し始めていた。





20160223


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