全国のコギャルども

「ちょっと、銀さん?起きて下さい、依頼ですよ?」
「銀ちゃん、起きるネ。早く依頼終わらせて茜姉待つ予定なんだからお前に構ってる暇はないアル」
「い゙だだだだあああ!起きる、起きるからァ!?髪!神楽!髪離して!!銀さんのトレードマークがあああ!!?」
「普段は嫌がってるクセにこういう時だけトレードマークとかふざけてるアルか」


ギリギリという痛みで目が覚めた。二日酔いの頭痛かとも思ったがどうも人為的かつ物理的な原因だった。馬鹿力で俺の髪を引っ張り続ける神楽を退かそうともがくが、本当の二日酔いの頭痛で動けない。新八が神楽を俺の上から退かしてくれたお陰で、ゆっくりではあるが動き出すことが出来るようになった。
だが、ガンガンと響く様な頭痛は無くならない。


「銀さん、行きますよ」


どうにか支度を終えた俺を見て、新八はさらっと言い放ち、スタスタと歩いて行ってしまった。



*



依頼は人探しだった。一週間家に帰らないハムが事件に巻き込まれているとか機械に巻き込まれているとか。詳しい話は全部新八が聞いているだろうし、兎に角頭痛は消えたが気持ち悪さが抜けない。
二人に任せりゃハムの一つや二つ、直ぐに見付かるだろ。そう考えて、ハム子が頻繁に出入りしているらしい店のあるビルまで来た。
繁華街を少し外れた、一見普通のビルだ。普通に前とか歩いててもおかしくなさそうな。
だから、其処でたまたま居合わせたのは、ただの、偶然だ。


「あれ?…茜姉!」
「神楽ちゃん?あら、新八くんと、万事屋さんまで………体調悪そうですね、大丈夫ですか?」


新八の名前まで呼ぶのに、何故俺はそんな呼ばれ方なのか、考えてみて、そういやまだ名乗ってもいないということを思い出した。が、如何せん頭を働かせるのも億劫だ。俺の心配をしてくれているようだが、適当に返事を返す。


「どうしたネ、茜姉。こんな所で」
「江戸の町を散歩していたの。来たばかりで知らないことが多いから。神楽ちゃん達は?お仕事?」
「ハム子を探してるアル!」
「…ハム、子…?」
「そうだ!どうせこれが終わったら茜姉を待つ予定だったアル!一緒に探すネ!!」
「え?私も?邪魔にならないかしら?」
「大丈夫アル!」


いつの間にか神楽が話をつけていて、何故か茜も一緒にハム子を探すことになっていた。
新八に渡していた写真もいつの間にやら神楽が持っていて、それを茜へ見せていた。写真を見ながら、ハム子、と呟く茜は何故か納得した様な顔をしていて、あんな完璧そうな人間でもああいう反応をするのか、と意外に思った。
にしても気持ち悪ィ。あんま真剣に考え事したくねェ。


「こんな店に来てんのか。こりゃ本格的に男だろ」


階段上って、よく来てるらしい店の扉を開いた瞬間に言葉がポロリと出ていく。


「私が探すアル。三人は待ってるネ、直ぐにハム子見付けるアル。そんで茜姉といっぱいお話するネ!!」


写真を新八から引ったくり、神楽はメラメラと燃える様な闘志を抱いて一歩を踏み出して行った。
カウンターバーの方へ歩いていく神楽を見送りながら、視界に入る位置に丁度空いていたボックス席を見付けて、ズルズルとそっちに歩いていく。
後ろをついてきた新八は、俺の向かいに座った。少し遅れてやってきた茜は、一瞬、どうしようかと迷って、俺の隣へと座った。
何これ、神様、これどういうこと!?期待していいの!やっぱり期待していいの!?


「万事屋さん、お水貰ってきました。飲めますか?」
「おォ、サンキュー」


心とは裏腹に、声は出ない。むしろ違う何かが口から出そう。
茜は俺の前に水の入ったグラスを差し出して背中を擦ってくれる。
ああ、これはあれだ。ただ酔っ払いの対応をしているだけだ。期待するだけ無駄だよやっぱ。
さすさす、と背中を撫でる手の温かさに、既視感を覚えながらも、そんなの色んな奴にやってもらってるからイマイチぱっとしない。


「オイぃぃぃ!!ホントに捜す気あんのかァ!?」


神楽が話を聞いていた鳥人の天人が声を荒げた。


「銀さん…神楽ちゃんに任せてたら、永遠に仕事終わりませんよ」
「あーもういいんだよ。どーせどっかの男の家にでも転がりこんでんだろ、あのバカ娘…」
「えっと……神楽ちゃん、戻ってきてもらいます?」
「飽きたら戻ってくんだろ」


呆れた声を上げる新八に対して適当に答えると、茜が神楽を見ながら立ち上がろうとした。
ソファーの背に身体を預けて、頭を抑えながら茜を止める。茜は俺と神楽と新八を順番に見て困っている様だった。


「アホらしくてやってられるかよ。ハム買って帰りゃあのオッさんもごまかせるだろ」
「ごまかせるわけねーだろ!アンタらどれだけハムでひっぱるつもりだ!!大体、茜さん引いてるだろ!!依頼先間違ったと思ってるって!!」


本音をポロリと漏らせば、新八がしっかりと食い付いてきた。その激しいツッコミが頭に響く。ちらりと茜を見ると、確かに苦笑いを浮かべていた。そういや同じ人探しの依頼だ。自分のもこんな風に扱われてると思うかもしれない。でも美人とハムじゃ天と地ほどの差があるんだと分かってほしいもんだ。


「ワリーけど二日酔いで調子ワリーんだよ。適当にやっといて、新ちゃん」


何か言おうと思ったが、調子悪さが最高頂だ。茜を立たせて、フラフラとトイレを目指す。ギリギリまでもってくれ、俺の腹。流石に人間の尊厳は失いたくない。後ろから俺の名前を呼ぶ新八の声が聞こえてきたけど、反応するのも厳しい。
マジやばい。あー気持ちワリー。





20160213


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