大事な家族が
「何かすいません、変な所へ連れて来てしまって」
「茜姉のことは私が守るヨ!安心するアル!」
「私は大丈夫ですよ。神楽ちゃんも、ありがとう」
ソファーに座り直して、改めて向かいに座る茜さんへ頭を下げる。神楽ちゃんが何故かブーツを脱ぎ、ソファーの上で正座している状態で茜さんへガッツポーズを示した。茜さんは神楽ちゃんの隣で笑っている。
チラリとトイレの方を気にしているのは、この状況で更に銀さんを心配しているからなのか。個人的には今すぐ茜さんに帰って頂きたい。さっきの鳥人の言葉を聞くなら、此処で茜さんに変なクスリを盛られる不安を抱えながら銀さんを待って更にハム子を捜すなんてキツすぎる。
そんな僕の心情なんて気付くわけもなく、茜さんは神楽ちゃんと二人、楽しそうに話をしていた。
「遅いな銀さん」
暫く二人の会話を聞いていたが、いつまでも帰ってこない銀さんが心配になり、呟く。
「そういえば、そうですね」
「どうも嫌なカンジがするんだ、この店…早く出た方がいいよ」
店内ではただ音楽に合わせて男女入り交じってダンスを踊っているだけだが、どうにもさっきの鳥人の話が頭を掠める。
「捜しに行って来ましょうか?」
「茜姉は此処にいるアル。私捜してくるヨ」
茜さんを退かして、神楽ちゃんが立ち上がろうとする。
瞬間に、カチャリと不吉な音と共に、神楽ちゃんの頭に銃が当てられる。
「てめーらか、コソコソ嗅ぎ回ってる奴らってのは」
如何にもな格好の男が大勢で、僕らの座っていたソファーの前に立っていた。神楽ちゃんが茜さんを守る様に後ろ手に隠す。
「なっ…なんだアンタら」
「とぼけんじゃねーよ。最近ずーっと俺達のこと嗅ぎ回ってたじゃねーか。ん?
そんなに知りたきゃ教えてやるよ。宇宙海賊“春雨”の恐ろしさをな!」
銃を構えたまま、男はドスの効いた声で話した。正直、全く嗅ぎ回っていた覚えはない。恐らく別の誰かと勘違いしているんだと思うが、この状況で別人ですと言って素直に帰れる筈もない。何でこう肝心な時にいないんだよあの天パ。
どう三人でこの状態を切り抜けるか、必死に考えていると、神楽ちゃんの後ろから茜さんが出ていき、銃と神楽ちゃんの間に割って入った。
「茜さん!?」
「茜姉、危ないアル!!」
予想外の出来事に僕も神楽ちゃんも声を上げるが、茜さんは僕らの方を振り向いて、笑う。そして、男達を見やった。
「ごめんなさい、お兄さん達。多分、違う人と私達を間違えていると思うの。私達、家出した友達を探してて……居ないみたいだからもう帰るつもり。退いて下さる?」
丁寧に、でも凛とした様子で、茜さんは男達に向けて言い放つ。ニコリと、綺麗な笑顔付きで。
男達の後ろの方がざわざわと何故か言葉に従って退こうとしていることに気付いたが、手前の奴らが後ろに向けて一喝していた。
その様子を横目に、茜さんが視線だけを僕らに向ける。
「少し時間稼ぐから、二人とも出口まで逃げれる?」
言われた言葉に反応するより先に、銃を構えていた男が引き金に掛かっていた指に力を込めた。
渇いた銃声が、響いた。
20160213
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