二より三


お兄ちゃんと徹くんは夏休みから青葉城西高校のバレー部へ行っている。二人とも推薦を貰ったようで高校生に混ざって練習しているらしい。詳しいことはよく分からないけれど、二人が揃ってバレーを出来ているという事実は変わらないのだ。その事実と共に、もう一つ。引退してから、部活帰りの私は家で二人に出迎えてもらっていた。でも、流石は高校生の部活だとでも言うべきか、私よりもお兄ちゃんの帰ってくる時間の方が遅くなったのだ。当然、そんな時間から徹くんが家に来ることもなくて、会うのは学校か、高校の部活がないとき。会えなくなって寂しいけれど、徹くんは今まで全く活躍していなかったメールをくれる様になった。あまり携帯を見ない私は、家を出る前と帰ってきてからしかメール出来ないけど、徹くんはいっぱいメールをくれる。


「ただいま」
「あ!おかえり、お兄ちゃん!」

リビングで徹くんのメールを見ていたら、玄関から疲れた声が聞こえてきた。見えたお兄ちゃんは、練習後でぐったりとしている様で、私の声に反応した。疲れてるお兄ちゃんに手を伸ばすと、呆れた顔をしたお兄ちゃんが荷物を置いてから私の前までやってきて、しゃがんだ。私と目線が合う。


「どうした?」
「最近、お兄ちゃん充電してないから」


ぎゅーってお願いをすると、お兄ちゃんは私の頭を撫でてから、ぎゅっと抱き締めてくれる。部活帰りだからか、汗のニオイがするけど、ちゃんとお兄ちゃんの匂いもして嬉しくなって持っていた携帯を置いて、お兄ちゃんの背中に腕を回す。


――ピロンッ


暫くお兄ちゃん充電をしていたら、置いていた携帯が鳴った。多分、徹くん。でもお兄ちゃんと離れるのがまだ惜しくてメールは気付かないふりをしてみる。


――ピロンッ ピロンッ ピロンッ


受信音が連続的になった。これは、電話だろうか。取らなきゃいけないけど、まだ離れたくない。どうしようかと悩んでいると、お兄ちゃんが片腕を私から離した。


「んだよ、及川」
『えっ!岩ちゃん!?これ光儚ちゃんの携帯だよね!なんなの!?』


え。
突然お兄ちゃんが口を開いたかと思えば、徹くんの声が小さく聞こえる。音漏れひどいなと思ったけど、そうではない。お兄ちゃんの手の中にあるのは私の携帯だ。ビックリしてお兄ちゃんから離れようとお兄ちゃんの肩を押してみるけど、お兄ちゃんは片腕なのに力で負けて、お兄ちゃんの腕の中にキレイにおさまる。


「今は取り込み中だ、邪魔すんなボゲ」
『岩ちゃんちょっとそれどうい――プツッ』


徹くんの声が聞こえなくなった。お兄ちゃんは携帯を離したのか、また私の背中に腕を回してきて、すっかり元の体勢に戻った。徹くんには悪いけど、お兄ちゃんとこうしているのを今は最優先したい。また携帯が鳴り出して、でもお兄ちゃんがどこに置いたか分からないから確認することも出来ない。ピロンピロンッ。ドタドタッ。
携帯の音とは別の音が響いて来た。少し遠くから聞こえてきていた音はどんどんと近付いてきて、玄関が勢い良く開く音がした。ドタドタッ。更に音が大きくなる。


「岩ちゃん、光儚ちゃんに手出さないでっ!光儚ちゃんの初めては全部俺のモノなの!!」


大きい音と共に現れたのは徹くんだった。音にも負けない声で叫んでる内容は意味不明だ。変なこと言わないでって伝えようと思って振り向こうとしたら、お兄ちゃんが私の座ってるソファーに膝を乗せた。ギシッと音がする。お兄ちゃんのおでこが私のおでこに触れる。見えたお兄ちゃんの顔は少しおかしそうに笑っている。


「あああああ!!何、ちょ、岩ちゃん、離れて!!」


徹くんが焦った声を上げて、ソファーの後ろからお兄ちゃんを押した。お兄ちゃんは簡単に離れていく。徹くんの顔を見ると、何だか泣きそうな顔をしていてビックリした。


「徹くん、どうしたの!?」
「大丈夫、光儚ちゃん?何もされてない!?」
「兄妹なんだから何かあるわけねぇだろグズ川!」


徹くんが私の肩を掴んで前後に振るので、頭はぐわんぐわんするけど、徹くんの後ろからお兄ちゃんが徹くんを叩いていて、いつも通りな光景に嬉しくなってついつい笑みがこぼれた。





20141204
(大体、テメェには光儚任せるつもりねぇから)
(ひどい一お兄ちゃん!)
(うるせぇ、黙れ!)
(二人とも仲いいねー)
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