わかれの日
時間が経つのは早い。部活に追われながら過ごした一年生の時間ももうすぐ終わる。お兄ちゃんが朝からそわそわしていて、私は毎日お兄ちゃんの顔を見ているからか実感は少ないけど、でも今日で三年生はいなくなってしまうのだ。最後の日だからと、お兄ちゃんと登校することに決めて、二人で徹くんを迎えに行く。徹くんは笑顔で家から出てきたけど、へらへら笑っている笑顔はいつもより寂しそうで、徹くんに手を伸ばすと、静かに手を握られた。もう片方をお兄ちゃんと繋いで、三人での中学最後の登校をする。
「光儚ちゃん、絶対一緒に写真撮るからね!」
徹くんと繋いでいた手がぎゅっと握られた。うん、って返事をしながら徹くんにぎゅっとし返す。
「お兄ちゃんも!写真!」
「いいね!三人で撮ろう、岩ちゃん!」
「お……おう」
お兄ちゃんは徹くんの勢いに圧倒された様子で返事をした。お兄ちゃんと繋いだ手にもちょっと力を込めてみると、お兄ちゃんは迷いなく握り返してくれる。
「明日から徹くんと毎日会えないのかー」
「ん?光儚ちゃん、寂しいの?」
「んー…うん、寂しいや」
徹くんの言葉に、少し考えてみる。答えは直ぐに出た。毎日、徹くんの笑顔が見れないなんて寂しい。部活引退の時も寂しかったけど、でも校舎内で会えてたし、思った程は寂しくなかった。
「光儚ちゃんっ!俺、毎日メールするっ!」
急に徹くんに手を引かれて、力強く抱き締められる。お兄ちゃんと繋いでいた手が離れてしまって、お兄ちゃんの方を見てみると、呆れた顔をしていた。
周りに人が増えてきたところで、お兄ちゃんが徹くんの頭を叩いた。離れろ、って言葉といい音を立てる徹くんの頭。私に回っていた腕を離して、徹くんは頭を抱えた。結構痛かったのだろう。
お兄ちゃんは徹くんをほっておいて、私の腕を引いて歩いていく。後ろから、ひどいひどい岩ちゃんのバカ、ってぐずぐずとしながらついてくる徹くんが何だか可愛く見えてしまったのは秘密にしよう。
*
卒業式が終わって、卒業生は全員体育館から出てきて、皆写真を撮ろうと集まっている。人混みの中にいるはずの徹くんを探すけど、見当たらない。キョロキョロと歩きながら辺りを見渡していると、後ろから肩を叩かれる。徹くんかと思って振り返ってみると、お兄ちゃんがもみくちゃにされたみたいで制服をシワだらけにして立っていた。
「お兄ちゃん、徹くんは?」
「アイツなら呼び出しくらってたぞ」
「呼び出し……?」
体育館の裏に呼び出して、積年の恨みを…!とかいうやつだろうか。どうしよう、徹くんがちょっと悪そうな先輩に囲まれてボコボコにされて病院に運ばれたりしてしまったら。
「お兄ちゃん……!徹くんを助けないと…!」
「は?助ける?」
「徹くんがボコボコになっちゃう…!」
「は?何言ってんだ、光儚?」
どうしようどうしようと、徹くんを探しに行こうとしたらお兄ちゃんに止められた。と同時に、視界が真っ暗になる。
「だーれだっ」
「……徹くん!?」
「当たり!さすが光儚ちゃん!」
私の視界を手で遮っていた徹くんは、へらっと笑っていて、どこにも殴られた痕はない。無事だったんだ、良かった。ほっとしたら、徹くんにどうしたのって聞かれて、何でもないと笑う。徹くんは首を傾げたけど、直ぐに何かを差し出してきた。受け取ってみると、それは制服のボタンだった。
「俺の第2ボタン、光儚ちゃんにあげるっ」
徹くんはキレイに笑って、写真撮ろうって言った。
20141227
(写真、携帯でも撮っていい?)
(うん、じゃあもう一枚ね!はい、ちーずっ!)
(ありがと!これで、こうして……出来た!)
(光儚ちゃん、何してるの?)
(待ち受けにしたの!)
(……光儚ちゃんっ!!)
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