溢れる嫉妬心
「岩ちゃん、屋上行こー」
今日のお昼御飯を引っ付かんで、岩ちゃんの席へと行く。岩ちゃんはうるせぇ、って呟きながらも自分の鞄からお弁当箱を取り出して立ち上がった。
二人で屋上に向かいながら、最近頑張ってる光儚ちゃんについて話す。部活が終わった後の俺の自主練に付き合ってバレーのルールを覚えたり、家に帰ってから必死にバレーの本読んだり。マネージャーの仕事もどんどん上達しているし、岩ちゃんが言うには家ではテーピングの練習したりしてるらしい。
「光儚のこと、監督もマネージャーとして認めてくれたみたいだしな」
「あれだけ頑張ってたら認めるよ」
俺も頑張んなきゃ。
最近、一年生の影山がめきめきと上達している。同じセッターとして俺のことを見本にしているらしいけど、後ろから追い付かれそうになる恐怖しか感じない。今年こそ、今年の大会こそ俺は牛若倒してもっと上へ行きたいのに。
「何考えてんだ、ボゲ」
「いたっ!」
岩ちゃんは話すと同時に俺の頭を叩いた。結構な威力のそれのせいで頭がじんじんとする。
「岩ちゃん、俺がバカになっちゃうじゃんー」
「これ以上悪くなんねえだろ」
屋上の扉を開けながら言う岩ちゃんに、ひどいよと返すとうるせぇって怒られた。ひどい、理不尽だ。ぷんぷんと怒りながら定位置に座り、弁当を広げる。岩ちゃんも俺に倣って座る。広げた弁当には俺の好きな卵焼き。一個ちょーだいって言いながら返事を待たずに奪えば、てめえ、って怒られたけど、食べちゃえばこっちのもんだ。最近、早起きに慣れた光儚ちゃんが料理が出来る様になる為に、お母さんを手伝ってお弁当を作ってるらしくて、卵焼きは彼女が作ったのだ。それを聞いてから、岩ちゃんのお弁当の卵焼きは俺の大好物だ。
「あー、おいしー……あれ?」
「どうした?」
「岩ちゃん、あれ、光儚ちゃんだよね」
屋上から見える、校舎裏の少し人目につかない所に、光儚ちゃんが立っている。岩ちゃんに確認してもらって同意を得たから間違いなく光儚ちゃんだ。キョロキョロと周りを見渡しながら少し焦っている様な困っている様な。上から声を掛けてみようかと思った瞬間に、光儚ちゃんに近付く男子生徒が一人。そうじゃないかなとは思っていたけど、あれは告白とかそういうやつだ。
男子生徒が光儚ちゃんに何か言ったのか、光儚ちゃんは困った様に視線をさまよわせてから、頭を下げた。断ったのかな。男子生徒が食い下がる。光儚ちゃんがまた謝る。ちょっと怒ったらしい男子生徒が、光儚ちゃんの腕を掴んだ。
どろどろと、心の中で何かが渦巻いて、見ていられなくなった俺が視線を外す。岩ちゃんが代わりに覗き込んだかと思えば立ち上がった。
「おい!人の妹に何してんだ」
上から、岩ちゃんは大きい声を出した。見ていられなかったらしい岩ちゃんが叫んだことにびっくりして岩ちゃんを見ると、岩ちゃんは何かに反応して走って行ってしまった。多分、光儚ちゃんのところに向かったのだろう。岩ちゃんはホントに光儚ちゃんを大事にしていて、光儚ちゃんも岩ちゃんがホントに大好きで。
そんなのずっと分かってたのに、今更なんでこんなにもやもやするんだろう。光儚ちゃんが一番大事に思ってるのは岩ちゃんで、でも、誰よりも光儚ちゃんを大好きなのは世界を探したって俺なのに。
ちらりと見た下には、たどり着いたらしい岩ちゃんと光儚ちゃんがいて、岩ちゃんが必死に光儚ちゃんを抱き締めて慰めてる。ああイヤだ。あんな姿まで見たくないと思うなんて。どろり。俺の中の何かがまた渦巻く。
岩ちゃんが、光儚ちゃんの頭を撫でて何かを話して、こっちを見る。光儚ちゃんもこっちを見て、俺と目が合って、手を振ってくれた。笑顔で手を振り返すと、光儚ちゃんはさっきまでの困っていた顔が嘘の様に嬉しそうに笑った。俺を見て笑顔になってくれたのかと思うと、さっきまで俺の中にあったどろどろが一気に消えていく。
20141004
(俺だけのものにしたいなんて、我が儘)
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