成長したこころ
またミスをした。もっと強くならないと、と練習すればするだけミスが増えた。がむしゃらに練習する中で、後ろから追い掛けてくる影山にイライラした。そんな影山と話す光儚ちゃんの姿に、更にイライラした。
「――今日の交替はおめーの頭冷やす為だろうがよ。ちょっとは余裕持て」
溜め息を吐きながら、岩ちゃんは呆れた様子で言う。余裕なんて持てない。だって練習したってしたって、まだまだ足りないんだから。何で岩ちゃんは分からないんだ。
「今の俺じゃ白鳥沢に勝てないのに余裕なんかあるわけない!!俺は勝って全国に行きたいんだ。勝つ為に俺はもっとっ」
思っている事を正直に口に出した。岩ちゃんに向かって怒鳴るなんてこと、したことない。でも俺は間違ってないはずだ。なのに、俺の言葉に岩ちゃんはキレた。そして強烈な頭突きをかましてきた。何でか分からなくて、驚いていると、岩ちゃんは俺の胸ぐらを掴んで叫んだ。
「てめえ一人で戦ってるつもりか冗談じゃねーぞボゲェッ
てめーの出来が=(イコール)チームの出来だなんて思い上がってんならぶん殴るぞ!」
「もう殴ってるよ!!」
鼻血まで出てるんだから!
でも俺の声なんて聞こえてないみたいに、岩ちゃんは声を荒げ続けた。
「1対1で牛島に勝てるヤツなんか北一には居ねえよ!!けど、バレーはコートに6人だべや!!相手が天才1年だろうが牛島だろうが“6人”で強い方が強いんだろうがボゲが!!!」
岩ちゃんは俺から手を離して、息を切らしながら俺を見ている。
ああ、そうか。バレーは全員で戦うものなんだ。チームメイトも監督も、マネージャーだって全員で戦うんだ。俄然無敵な気分。すっきりとした気分で岩ちゃんをからかうと、また殴られそうになった。
「光儚にも迷惑掛けてたんだから、ちゃんと謝っとけよ」
「うん、ごめんハジメお兄ちゃん」
「ふざけんなボゲッ」
殴られた。
岩ちゃんを見ると、俺はお前の兄じゃねぇ、って怒る。けど、いつか俺は岩ちゃんの弟になってやるんだから。
そう思うと、まだすっきりしない気持ちがあったことに気付く。光儚ちゃんが影山とかと楽しそうに笑っている姿を見たくなかった気持ち。もしかしたら影山のこととか好きになっちゃったんじゃないかと不安で仕方なかったし、情けない俺を見て愛想をつかしていたりしないだろうか。
「光儚ちゃんは…」
「お前の使ってたボトル持ってった」
あ、ホントだ。なくなってる。
「試合中、お前のことちらちら見てた」
「え?」
「最近、家で遅くまでバレーの勉強してた」
「……熱心だね」
「“徹くんが何悩んでるか分かんないから兎に角バレーを知らなくちゃ”だとよ」
今の、光儚ちゃんの真似なのかななんて岩ちゃんにつっこもうとしてしまったけど、そんなことより、光儚ちゃんが俺の為に頑張ってくれていた事実が嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
バシッと岩ちゃんに背中を叩かれた。行けよと一言。ハジメお兄ちゃん、ありがとう、って言って水場へ向かう。後ろから、マジで殴る、って岩ちゃんの叫び声。でも返事してる場合じゃなくて、もう暗くなった外で光儚ちゃんが一人で寂しくドリンクボトル洗ってるのかとか考えたら、自分が情けなくて、足だけひたすら動かす。光儚ちゃんが誰を好きだとか、俺には関係ない。いや、関係ないとか嘘だ。もし光儚ちゃんが誰か知らない男と腕組んで歩いてたりしたら発狂して光儚ちゃんを奪ってしまう自信はあるけれど。兎に角、俺はただ光儚ちゃんを世界で一番、岩ちゃんよりも大好きだということだ。
20141008
(光儚ちゃん!)
(……徹、くん?)
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