汀
2019/06/02
優しい夢
「なぎさ」
*にふれるあたたかな指先とともに優しい音が聞こえる。
はっきりしない意識をどうにか叩き起こして瞳を開けると、おだやかに笑みを浮かべるその人がいる。彼女の膝に頭を預けて、眠るなんて中学生に上がる前には確か卒業したはずだった。だからこんな風に彼女を見上げるのは懐かしいというよりも、新鮮、だ。「なぎさ、どうかしたの?」人と目があうと、少しだけ首をかしげるのは彼女の癖。何か言葉を返そうと口を開きかけて、やめた。伝えたいことは沢山あるはずなのに、何一つ言葉にはならなかった。なにより、これは夢だ。何を伝えようともそれは彼女には伝わらない。何故ならもう、存在しないのだから。
それにしても、随分と鮮明に夢見るものだと感心した。
「なぎさ、眠るの?」
こんなやわらかな声色も、落ち着いた笑みも、自分にはもう思い出せはしないものだった。繰り返し、目にするのは悲しげに目を伏せているところか、窓の下で人形のように動かなくなった、ところ。
「おやすみなさい、なぎさ」
心地よく耳に届くそれは、同時にとても酷い後悔を連れてくる。
彼女の呼ぶ名前を呪いにしたのは、自分だ。
「なぎさ」
*にふれるあたたかな指先とともに優しい音が聞こえる。
はっきりしない意識をどうにか叩き起こして瞳を開けると、おだやかに笑みを浮かべるその人がいる。彼女の膝に頭を預けて、眠るなんて中学生に上がる前には確か卒業したはずだった。だからこんな風に彼女を見上げるのは懐かしいというよりも、新鮮、だ。「なぎさ、どうかしたの?」人と目があうと、少しだけ首をかしげるのは彼女の癖。何か言葉を返そうと口を開きかけて、やめた。伝えたいことは沢山あるはずなのに、何一つ言葉にはならなかった。なにより、これは夢だ。何を伝えようともそれは彼女には伝わらない。何故ならもう、存在しないのだから。
それにしても、随分と鮮明に夢見るものだと感心した。
「なぎさ、眠るの?」
こんなやわらかな声色も、落ち着いた笑みも、自分にはもう思い出せはしないものだった。繰り返し、目にするのは悲しげに目を伏せているところか、窓の下で人形のように動かなくなった、ところ。
「おやすみなさい、なぎさ」
心地よく耳に届くそれは、同時にとても酷い後悔を連れてくる。
彼女の呼ぶ名前を呪いにしたのは、自分だ。