学生はじめ

2019/06/02

合コンモブ視点
「園崎くんって、音楽とか聞くんですか?」
「それなりに」
愛想もなく内容もない返答に俺が絶句した。してる場合じゃない!とへらりと笑って「この前あれ聞いてたよな!」とフォローをするも女の子はめげずに次の質問へと移っていった。
「じゃあ*、お酒は強い?」
「さあ」
たった2文字でも女の子は喜ぶのだから顔が良いってのは得だと思う。医学生というだけでこうして合コンは割とスムーズにセッティング出来るけれど、それだけでは彼女は出来ないのだ。1人黙々と酒を煽っている一に俺の目当ての女の子は正面をキープしたまま動かない。うっとりとした瞳は一だけを映している。丁度反対端では巧が女の子たちに囲まれている。輪に入れない男たちの視線に気付いてやってほしい。いや気付いてるのかもしれないが。誰だこの二人を呼ぼうと言ったのは。俺だ。仕方がなかったのだ。女の子側の幹事から「王路くんと園崎くん呼んでほしいな」って頼まれたのだ。ご指名だぞ。恨みがましい目で横の一を見ると相変わらず涼しい顔で、短い回答を繰り返していた。
「ねえねえ園崎くんはカノジョ、いるの?」
直球だ。しかしながらその答えは俺も気になるところではある。不特定多数の女の子と歩いているところを見かけはするけれど、特定の女の子を特別扱いしていたりする気配はない。着替えの際に惜しげも無く晒す肌には、どうみても他人がつけた痣があるからそういう関係にある人間はいるのだろうけれど、何せ一はそう言った話をしてくれない。恋バナとか武勇伝とか、そういう話で盛り上がりたい年頃だろ、俺たち。
答えを待つ女の子の方に一は目を向けた。ちかり、とあった瞳に女の子は僅かに頬を赤らめる。そして一は女の子のグラスを握っていた柔らかそうな手に指を這わせて、少しだけ笑った。
「鬱陶しい」
「……え?」
場が一瞬、凍りつく。反対側で「やだぁ、巧くんったらあ」と甲高い声が響いた。今だけその空気が羨ましい。あっちに行きたい。
「俺と寝たいなら、さっさとそう言え」
それはだめだろ、一。俺がすかさずフォローに入ろうとした直後、俺は気付いた。女の子は顔を真っ赤にしたまま一の手を握り返していた。
そんなことある?
そのまま俺にお札を二枚渡して、一と女の子はこの場から去っていった。もう一回言う。そんなことある?

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