花吐き
2019/06/02
嘔吐中枢花被性疾患
最悪の一言だ。
正式名称「嘔吐中枢花被性疾患」というこの病とはそれなりに長く付き合ってきた。幼いころに祖父から感染した、らしい。そう分かった時は理解していなかったが、自分の身の内から、まったく別の生物が育ち、体外に出るなど、悍ましい。気色が悪い。おまけに蔓が嫌に長くいつも喉に引っ掛かる。種類などに興味は無いが、白い花の甘ったるい匂いと重なって酷い吐き気がこみ上げる。無様に吐く姿を親からすら隠すようになったのは、小学校にあがってすぐのことだった。いつまでも上手く吐き出すことのできないコレは、人目を避けて、避け続けてきたというのに。
「はじめ」
楽しげに笑っているのが、見なくてもわかる。新しいおもちゃをみつけた。……いや、おもちゃの新しい遊び方を思いついた、だ。
「はじめって、花吐き病だったんだね」
「知らなかった」
「くるしそうだね」
「……手伝ってあげるよ」
最悪、というやつは重なるらしい。無遠慮に口の中を弄る指を噛み千切ってやろうと歯をたてた。