*ここが地獄の果だとしたらの続き
無駄に続きます



脱走を試みた。部屋の外にはアクマが複数おり、結果部屋に連れ戻された挙句いつもより手酷く抱かれ断念。
しかーし諦める私ではない。ここを出てイノセンスからも解放されたことだしゆっくり暮らすんだと、その後何度も試すがやはりアクマがいて逃げることは叶わなかった。ここを出たとしても国もわからなければお金もないが、きっとなんとかなる!……ナントカ…。
英語がわからなかったときに教えてくれたミミィもいない。来るのは性欲を処理するために訪れるイケメン。…イケメンが幸いだな、ってちげぇよ。

珍しくワインなんか持ってきて、その日は飲んだ。晩だか昼だか知る術はなかったがなんだがどうでもいいように思えてきた。…精神的にきそうだ、これ…。SAN値低いんだから勘弁してよ…。

寝ぼけながらそんなことを考えれば、目の前にティキがいた。驚くこともなく、ただその金色の瞳を見つめる。

「起きた?」
「……んん、なに」
「ひっでぇ声」

笑いを堪えるように肩を揺らすティキに、いらっとするが元気もなく睨むだけに留めた。誰のせいだ誰の。

「なぁ、」
「…」

いつになくよく喋る。いや、もともとよく喋るやつだったが。
瞳を歪めるそいつにいい予感なんてしない。触手プレイは忘れないぞ。

「ここから出してやろうか」
「…っ」

ここもお引越しだし?お前もそろそろ戻りたいだろ、なんて言いながら足を組むティキに勢いよく起き上がった。だるいなんていってる場合じゃない。

「…タダじゃあないね?」
「さぁ?」

疑問を疑問で返すな。そういってやりたいが言葉は思い浮かばなかった。立ち上がって服を着る。ここを出るなら、必要だ。相も変わらずにやにやと笑う顔に拳を入れてやりたいが幾度となく試したそれは悉く塞がれていた。

「なんてことはない、ただの脱出ゲームだよ」
「…脱出?」
「そ」

弄んでいた鍵を見せびらかし、ティキは笑う。甲高い音を出して弾いたそれは弧を描いて私の手に収まった。…スマートにキャッチなんて出来ませんが?

「塔の一番上で待ってる。…辿り着ければの話だけどな」
「…」

私を文字通り徹り向けた。扉がない場所から出ようとするティキの背中を眺めて、呼び止めた。彼は振り向く。

「…こんなこというのは可笑しいけど、今でもアンタにされた仕打ちは腹が立つけど。けど……ありがとう」
「…」

顔も見ずに反対側にある扉を開いた。背中であいつがどんな顔をしていたのかはわからないけど、私に向けられていた感情が確かにあったことは知っている。まぁ赦せはしないけど。

「ただのきまぐれだよ。…どうせお前はここで死ぬんだから」

背後で呟いた彼の声は私には届かなかった。


- - - - -


塔を目指せ。
なんだかRPGっぽい。鍵を握り締めて、改めて周囲を見渡した。真っ白な町並みが続いている。っていうか…

「めっちゃ崩れてる…?!」

ここで私を出したのは部屋に閉じ込められたまま死ぬより出て散々足掻いた挙句に死ねってことか!鬼か!…鬼だったわ。

崩れていく端の地面に、恐怖を感じてとりあえず目立つあの塔へ走る。この鍵はいつ使うの?!

「いた!あのひとだ!」
「あー!ほんとさ!」

白髪の少年と赤毛のバンダナ少年があらわれた!
どうする?
にげる にげる バック⇒にげる
反対向きにダッシュ!

「あ!待って!僕たちあやしい者じゃないんです!」

なんか言ってるがあやしい人は自分をあやしくないというんだぞ、少年。
私は必死に走るが、離れる気配はない。むしろ近付いてくる。あっれぇええ全速力なんだけどなぁああ!!

「ちっ、止まれクソ女」
「ぐえ」
「ちょっと神田!女性にその扱いはないでしょ!」

首根っこを引っ張られて、宙ぶらりん状態になる。力持ちね、少年C…。そして苦しい。


「ごほっごほっ」
「ああもう、ほら。大丈夫ですか?」
「ちっ」
「追いついた…っ…!もしかしてname、さん…?!」

涙目で咳き込んで息を整えている。殺されるかとおもったぜ…。
名前を呼ばれて、顔をあげるとそこには中国人系美女が。美女…。

「よかった…!生きてたのね…!」
「…あ、ありがとう…?」

久々に触れた細い同姓の腕に抱かれて、?マークを浮かべる。こんなベリーショートが似合う知り合いなんてここにはいないぞ。
ぽかーんとしていると先ほどの白髪の少年と赤毛のバンダナ、吸血鬼と傘、黒髪の短髪ポニテと長髪ポニテが見えた。

「あ!あんときの…」

言葉を続けようとしたが、それは揺れる地面によって遮られた。鍵を渡してくれと彼らは言う。一人では到底出れないだろう事は理解していたので素直に私は彼らに鍵を託した。
白髪の少年の手に渡ったそれは適当な扉に鍵をさしてあけた。開いた扉は部屋ではない別の場所に通じており、驚く。そう使うんだ。脚に怪我をしている女の子の肩を抱いて私も一緒にそこを通った。


「間一髪さー!」
「なんとかなりました…」

「大丈夫?、って聞くのはちょっと違うね。…歩きにくかったら言って?」
「…うん、ありがとうございます」

白髪少年と赤毛少年の会話に紛れて、私も美女と話した。彼女のことは覚えてないが、あのぱっつんは恐らく本部の者だ。目つきの悪さと日本人らしい名前で覚えている。
後ろで私を見張っている辺り、彼女のことが心配なんだろうなと苦笑いした。

「あの、nameさんはどうやって…」
「生き延びたかって?」

聞きづらそうに言う女の子に、私は笑いかける。10代に見える彼女たちには少し刺激の強い話だろうけど、嘘を言っても後々自分の首を絞めるだろうな。

「その前に…あなたたちの名前を聞いてもいいかな?」
「なんでテメェに教えなきゃならねえ」
「神田!」
「だって、名前呼ぶのに困るじゃん?」

彼女の肩から手を放して、刀を向ける男の子へ背中を押した。彼女のことを人質にするのではないかと危惧しているのだろうと思っての行動だ。片腕で女の子を抱きとめた神田は未だ剣先を私の額に突きつけている。

「お久しぶりかな?私を教団に連れて行ってくれた子だね」
「…やめてください、神田。今は進むべきです」
「……ちっなんかあったら叩ッ斬るからな」

眉間を寄せて白髪少年をみたあと神田は渋々剣を収めた。…こわっ
にこやかな笑顔を向けて自己紹介してくれる少年はアレン、赤髪がラビ、もう一人のポニテがチャオジー、おどおどしているのがクロウリー。

「え、リナリーちゃん?」
「…気付いてなかったのね」
「うわあああ、ごめん!美髪が印象的だったから!全然!ごめん!」

顔が青白くなるのを感じる。彼女は呆れたように溜め息を吐いて、笑った。やっぱりかわいいなぁ。
教団についたころ、英語がまったくと言っていいほどわからない状態でも彼女は呆れることなく優しく接してくれていたのを覚えている。髪が印象的だったと漏らせば少し寂しそうにするその顔に何かあったのだろうかと思い出そうとするが、漫画を読んだことが何年も前だったので記憶に埋もれたまま出てこない。

「そういえば、名乗ってなかった。私はname。イェーガー先生にお世話になってたんだけど…、その顔じゃ生きてはないんだね」

元帥の名前を出せば曇る顔に、苦笑いを零す。優しい子たちだ。それにまぁ予想はついていた。

「あのあと…あのあと、私は先生を殺したティキと遭遇した。けど、まぁ結果は当然あれだよねぇ」

はははと笑いながら言えば、ラビは笑い事じゃねぇだろと返す。
確かにそうだ。最期に先生にはお礼を言いたかった。

「ティキにまぁ玩具として連れて行かれた。ペットみたいなもんだったよ。それでここまで生きてこれた」

静まり返る彼らに、苦笑いする。

「咎落ちはしなかったんだな」
「…咎落ち?」

初めて聞いた単語にどう翻訳すればいいかわからない。
非難するように声が上がるが、丁度ドアに行き着いた。



待ち構えていたノアと神田を残し、先に進む。よくある漫画のパターンだが、現実にあると考えると少し胸が苦しい。
そのあともクロウリーと双子を残して階段を上る。
ほとんどベッドから動かなかった今の体力のない私は行きも絶え絶えだ。
リナリーはアレンの手を借りながら痛むだろう足で登っている。

「…がんばらなきゃ」

リナリーの一言で騒ぎ出す少年らに、体力の差を感じる。正直私は一歩も動きたくないです…。

「帰ったら寝るさ!」
「私ビール飲みたい…」
「ボクは…食べます」

リナリーはもっと色気のあること言わなきゃ恋人でできんさ!なっラビには関係ないでしょ!…っカンケーはねぇけど、さ…。
胸倉を掴まれているラビの頬が赤くなる。それを見逃さなかった私は抑える気もなく口元を歪めた。

「かぁわぁいいなぁああ」
「…!な、なにがさ!」

歳相応の少年らしい反応に、私より位置が高い頭を撫でた。
そんな恋愛すらまともに出来ない彼らに胸が苦しくなる。私には関係のない話なのに。

「ってか未成年は飲んじゃだめさ!」
「…未成、年!」

輝く顔にラビは?マークを浮かべ、リナリーは苦笑いした。

「nameって26歳なのよ」
「「「…えええええぇえっっっ」」」

声が反響した。




- - - -



戦いが終わって方舟はアレンが動かすものとなった。
彼にお願いししてベルギーの教会へと向かう。イノセンスが壊された場所。彼らに聞いた。ずっと霧がかかっているそれは私のイノセンスじゃないかって。
死体が吊るされた教会なんて人が寄り付くはずもなく、教会はあの日のまま。重症の怪我をしているアレンにお願いして、無理をしてまで繋げて貰った。彼もどうやらここには訪れたことがあるらしい。

「駄目です。ボクも行きます」
「無理をさせた私がいうのもなんだけど、休んでて」

言葉の攻防戦が続いて、そして私が折れた。
どうやら頑固者らしい彼は、私が心配と言うのだ。会って間もない上に、ノアに捕らわれていたという嘘くさい話をする私を。お人好しだ、そう思いながらも、教会の扉に手を掛けた。
あの日のことを思い出すと、怖い。けど、今は大丈夫。ティキはいない。

「…」
「大丈夫、ですか」
「…アレンよりは」

虚を突かれたような顔をして、むくれた。
そういう意味じゃないです。ふふ、ありがとう

あけたそこには霧がかかっていた。私は確信した。これは私のイノセンス。ミミィだ。
中くらいまで進んで、イェーガー先生に黙祷した。
深呼吸を一つして、閉じた眼を開ける。その時、霧散していたイノセンスは集まり私の口の中へと入り込む。生理的な反応で吐き出そうとするが、尚も入り込むそれに私は倒れこんだ。
アレンが駆け寄り、アクマの仕業ではないこれにどうすることも出来ず丸まった背中を撫でる。

殺そうとしているのではないことは、わかっている。声が頭の中で響く。

―遅い!遅い!遅い!!
ごめん、苦しい、って
―ボクのほうが苦しかった!!いつまでも来てくれない!
そう、だね…。ごめん。
―…この世界で、生きる覚悟はある?
…この世界で?

この世界で。
そう返ってくる言葉に言葉が詰まった。ここで生きるつもりはさらさらなかった。私は元の世界に帰って、やっとやりがいを見つけた仕事をするのだ。親に恩返しもしたいし、友達にだって会いたい。私は帰りたいのだ。
そう思うほどに胸に入ってくるイノセンスが苦しめてくる。このままじゃきっと殺される。そう思えてさえくる。
もがき苦しむ私にアレンは退魔の剣を突きつけるがすり抜けるそれはイノセンスを攻撃しなかった。


私は帰りたい!
―駄目。
どうして!
―この聖戦が終わるまで
…!

この聖戦がある先に帰る道があるという。
それまで戦えと。
ここに無理やり連れてこられた、そう言っても過言ではないと思いさえする。原因もわからないのに。けれど、死にたくなかった。生きたい、帰りたい!そのために私は…!
先ほどと思っていることは同じなのに、段々と苦しさは収まっていった。

やがて完全に治まったそれに眼を開けばアレンがいた。

「大丈夫ですか?!」
「…なん、いっ!!」

体を起こしてなんとか、そう続けようとした時に、肩甲骨の辺りに鋭い痛みが走る。思わず目の前の彼にしがみ付くが、そういえば怪我してるんだったと、自分の腕を掴んだ。
流れる血が固まり形をとる。羽を模した彫刻のような何かと目があった、気がした。

『私は帰る。それまでだから』

血の結晶は了承したというように首に巻きついた。それはリング状になって、赤い色が黒色になる。
アレンと顔を見合わせて、それをなぞった。肩甲骨を見てもらえば確かにイノセンスがあるという。確かと古い記憶の中で、イノセンスは進化するはずだったと思い出した。つまりこれはその姿なんだろう。

「わがまま、付き合ってくれてありがとう、アレンくん」
「いえ、僕のほうこそなにも出来なくてすいません…」

付き合せたのは私なのに。お礼と感謝を込めて、やっぱり少しだけ背の高いアレンの頭を撫でた。細くって綺麗ね。そう言えば顔を赤くするアレンがかわいい。
どうかこの子に少しでも多くの幸福を。

20160817

かきたかったとこかけたー!
なんだろうこれ。
ティキ…なのかな?

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