私にはかわいい弟が二人いる。一人は頭がよくいつも落ち着いているうちはきっての天才であるイタチ。鼻が高いよ、お姉ちゃんは。そして私もイタチも溺愛しているかわいい末弟のサスケ。今は姉さん兄さんと後を追っかけてくるかわいいかわいいかわいい弟なのである。
任務帰りふとイタチが森の中に入っていくのが見えた。修行でもするのだろう。どんな修行をしているのか気になった私は後をつけることにした。大丈夫、気配は消しているし、姉である分経験では勝ってるんだからね!…経験では…。
才能たっぷりな弟に吐血しそうな気分を抑え、たどり着いたのはうちはの敷地の郊外にある川。どうやら先着がいるようで親しげに話しているところを見ると友達らしい。イタチにもそんな子がいたんだねと内心号泣する。昔からクールビューティーで賢くて落ち着いている子だったからアカデミーに馴染めるかと心配してたんだよ!誰だろう?もしかして女の子かな?とじっくり見ればなんと私のアカデミー時代の同級生ではないか。言葉も少なめに組み手を始めたところをみると修行仲間ってところだろう。しかしまさか同い年ではなく年上の友達ができていたとは。シスイはコミュ力高いからなぁ。あ、そこ、おしい!盗み見しているのもつまらないから気配を消すのをやめて弟を応援する。心の中に留めておいただけなのだがどうにも声が漏れていたらしい。動きが鈍くなりやがて止まって大きなため息を吐いて私に振り向いた。

「姉さん」
「おかまいなく〜」
「…すまない、シスイ」
「構わないさ」

手をひらひらさせるとイタチはシスイを見上げた。身長差かわいい。一人外れているのは寂しいので二人に歩み寄った。

「久しぶりね、シスイ。卒業以来?」
「久しぶり。もうそんなに経つか。イタチの姉ってお前だったんだな、#name#」
「言ってなかったの?」
「…」

ふいと顔を逸らしたイタチ。かわいいと頭を撫でれば関係ないだろとぱしりと腕を払われた。硬直する。シスイはそんな言い方ないだろとフォローしてくれているがイタチはそのまま私が来た道を辿ってしまった。その間も硬直したままの私に心配そうに腰を屈めたシスイの服を鷲掴む。突然のことに目を見開くシスイだったが、呆れたようにため息を吐いた。

「うっ、これが…!反抗期…っっツライ…っ」
「…お前、相変わらずだな……」
「え?何が?」

血涙を浮かべそうなくらい顔を歪ませているその顔はお世辞にも綺麗とは言えない。とりあえず写輪眼しまえ。やがて鷲掴んでいたことに気付いた#name#は慌てて手を放して謝った。皺になっているがもともと修行するつもりで来ていたのでこれくらいなんともないという。

「ほんとブラコンだな。イタチがああなるのも頷ける」
「え?!シスイわかるの?!ちょっと前から一緒に寝てもくれなくてさぁ!!」
「…(一緒に寝てたのか)」
「アカデミー卒業した時くらいからお風呂にも入ってくれなくて…っサスケは入ってくれるのに!」
「(8才まで姉とお風呂…)」
「最近に至っては喋ってもくれないの!やっぱり反抗期?!いや、思春期!?」
「(そういえば昔弟を馬鹿にされて同級生半殺しにしたことあったなぁ…)」
「ぐぅううう…っ姉としては…っ弟の成長が何よりも嬉しい…!!!!」
「…本音は?」
「ざみ゛じぃい゛いいい゛いっっっっ」

シスイにしがみ付き声を上げる私。はたから見れば別れ話にしがみ付いている姿にしか見えないがそんなこと頭になかった。持ってきていたタオルを差し出してくれるあたりシスイは昔から変わらず優しい。柔軟剤と僅かに鼻に霞めるシスイの香りに包まれて涙と鼻水を拭った。人の香りとか変態臭いな、私…。

「落ち着いたか?」
「う゛ん。タオル洗って返すね…」

いいと言うがわめき倒した挙句鼻をかんだタオルを押し付けるなど私の気が済まなかったために無理やり奪い取った。しばし沈黙が訪れる。…うん、気まずい。何か話しかけようと見上げると瞳があった。よくみるとシスイってイケメンだ。イタチとサスケには劣るけど。
逸らされずに依然とこちらを見たままなので、私もその瞳を見つめ返した。逸らしたら負けた気がする。やがて笑い出したシスイが視線を逸らしたために勝負は私の勝ちとなった。

「私の勝ちね」
「いつから勝負になったんだよ」

笑いを押さえながら肩を揺らすシスイはやがて止まり、彼より背の低い私の頭に手が置かれた。目が合う。

「#name#はかわいいな」
「な…っ、…なにそれ」

言われなれない言葉に恥ずかしくなって視線を右斜めの地面に向けた。オレの勝ちだというシスイが楽しそうだったのでまぁいいかとむくれた頬を収めた。



20170108
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