「チャモ〜……」
「お疲れ様、ヒエン」
トウカシティまで半分を過ぎた頃、たくさんの野生のポケモンとバトルをしてくたびれたヒエンが地面に座り込んだ。
草むらに自分から突っ込んで、出てくるポケモンたちにバトルを吹っかければそりゃあ疲れるよね。
ポケモン図鑑を確認すると、技のPPはほとんどない。
ここからはルルに交代しよう。
くたくたのヒエンをケガを治すためにしゃがんでキズぐすりをかける。
くいくい。
すると、羽織っていたパーカーを不意に引っ張られた。
ルルはヒエンの後ろから、私の後ろへ視線を向けている。
なんだろう。
くいくい。
というか誰だろう。
振り向くと、そこには可愛らしいポケモンがいた。
小さな手で私のパーカーを引っ張ったみたい。
「……!」
そのポケモンは、緑の前髪のようなところから覗く赤い目を嬉しそうに輝かせて笑う。
思わずルルに視線を向けると、ルルは大して驚いていなかった。
後からついてきていたのを、知っていたような……そんな反応。
知ってた?と聞くと、こくりと頷く。
そういえば、突然振り向いた時があった。
その時から、このポケモンはついて来てたのかな?
「どうしたの?」
親とはぐれて迷子……だったりするのかな。
聞いてみると、そのポケモンは首を横に振る。
……そもそもこのポケモンはなんてポケモンなんだろう。
持っていたポケモン図鑑を向けると、画面にそのポケモンの簡単な情報が表示された。
──ラルトス。きもちポケモン。頭部のツノで相手の感情を読み取ることができる。
頭部のツノ……ってこの赤いやつかな。
ラルトスは相変わらずパーカーの裾を掴んだまま、ニコニコと私を見上げている。
「チャモ……」
「グゥゥ」
「チャモ〜……」
ヒエンの眠そうな声に顔をそっちへ向けると、うとうとと船を漕いでいた。
それをルルが足でつついて起こしている。
ずいぶんこの道路にいたからもう夕方になってしまう。
昼過ぎから出たのに時間をたっぷりかけていたみたいだ。
トウカシティに早く向かって、それでポケモンセンターで休もう。
それで……ジムに、行ってみなくちゃ。
「ごめんね、私たち先を急いでいるから……」
「!……」
申し訳ないけど、ヒエンをちゃんと休ませてあげたい。
モンスターボールに入れただけじゃちゃんと回復はしないから、ゆっくり休ませてあげないと。
パーカーを掴んでいたラルトスの手をそっと離して、もう一度ごめんね、と声をかけた。
そんな悲しそうな顔をしないで。
バトルをするつもりではないみたいだから、できればこのままバイバイしたい。
悲しそうに俯いたラルトスに少し心がズキンとしたけど、眠たそうにしているヒエンをボールに戻す。
ルルの入っていたボールと、ヒエンの入っているボールの位置を替えて足を踏み出した。
……はずだった。
『いかないで!』
後ろからドンと、足に軽めの衝撃。
不意打ちのそれに体勢が崩れる。
隣にいたルルが、私の体が倒れる前にパーカーを咥えて引っ張ってくれた。
衝撃の来なかった反対の足を前に出して踏ん張り、視線を落とす。
可愛い、でも消えてしまいそうな、儚いような、そんな声は誰のだろう。
私以外の人の姿は遠い、ルルはポケモンだから人の言葉は話せないし、ヒエンはボールの中。
そうすると、ラルトスは……?
「……喋った?」
それにはルルもびっくりしたみたいで、珍しく目を真ん丸にしている。
『バイバイなんて、いわないで……』
ラルトスはパーカーを引っ張った時よりも強く私の足にしがみついて、消えそうな声≠ナそう呟いた。
それに、上からじゃちゃんとは見えないけれど、ポロポロと零れる雫。
泣かせてしまった。
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