ポロポロと涙を流すラルトスの背中をさすりながら、彼女の言葉に耳を傾けた。
私のことを影からずっと見てたこと。
ルルとヒエンを羨ましいと思ったこと。
わたしも、なまえがほしいこと。
私について行きたいこと。
日が暮れそうな夕方。
おいていかないでと言った彼女はエスパータイプのポケモンだから、少しは人とも言葉を交わせるらしい。
らしい、というのは私の兄さんのポケモンにもエスパータイプはいるけれど、その子は話せなかったから。
エスパータイプのポケモン全てがこうやって、テレパシーを行使できるわけではないようだ。
『わたし、あなたがいいの。あなたについていきたいの』
「……うん」
『わたしをつれていってください』
連れていく……ってことは、この子を捕まえてってこと?
ラルトスの隣に座っているルルと目を合わせると、肯定するように頷かれた。
ええっと……バトルしてないし、弱ってないし、そういう場合はどうやって捕まえるんだろう……?
モンスターボールを投げるの?
いや、そしたら痛いでしょ。
あれはバトルをして、ちょっと離れたところまで届かせるのを目的に投げてるんだから、なにもこんな至近距離で投げることはないし……
ううーん……何も知らないでいるって後が困るんだなあ……
「本当に私でいいの?私なんかより、あなたに相応しい人はたくさんいるよ」
『あなたがいいの』
さっきと同じ言葉。
ルルは溜め息を吐くと、立ち上がって私の鞄に触った。
ちょうどボールを収納するためのポケットに。
え、もう諦めてボール出せよってこと?
少し固まってると、急かすようにルルが唸る。
鞄を肩から下ろして、ボールポケットを開き、1つのモンスターボールを取り出した。
新品の、ピカピカのモンスターボール。
「……ガウ」
「わ、わかったって。私も、私がいいって言ってくれてるのに、このままにするなんてこと、しないよ」
「……」
「せっかく、私なんかがいいって言ってくれたんだから」
昨日、アチャモのヒエンをもらって旅に出たばかりの、右も左も常識もまだまだ知らないような私がいいって。
だから、それに応えてあげたいな。
「ラルトスあのね、私、ジゼルっていうの」
『ジゼルさま……』
「いや様なんて大層なものいらないよ……?」
じゃあ、改めてよろしくね。
泣き顔から一転、笑顔になったラルトスの頭に軽くボールを当てる。
コツンと当てるとボールが開き、見慣れた閃光がラルトスを包むとラルトスと共にボールの中へ収まった。
ハルカの時とは違い、ボールは一度も揺れず、カチリと音を立てる。
……ゲット、できた?
嬉しいのと不安なのとが混ざってドキドキしたままルルを見れば、褒めてくれるように鳴いた。
初めて、ゲットした……!
だらしなく表情が緩んでいくのがよくわかる。
「これからよろしくね、ラルトス」
ラルトスの収まったボールに声をかけると、返事をするように揺れた。
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