─side:アブソル─
「ジム戦、に挑戦しようと思います」
ほんとこいつ馬鹿だ、と素直に思った。
ジム戦、この町のジムリーダーとポケモンバトルをすること。
そのくらいは俺もわかる、でも今か?
まともにバトルができるのは俺ぐらいじゃないか?
確かに駆け出しのポケモントレーナーとしては手持ちポケモンは充実しつつあるが、その分まだ育て始めたばかりじゃないか。
焦る必要が……あったか、早く帰りたいのか。
「この町のジムリーダーツツジさん、岩タイプの使い手なんだって。初めてだし、ルルがメインになって挑戦しようと思う。……初めてだから、ルルに先陣切ってほしいの」
いや、そういうわけではなさそうだ。
あのぬいぐるみばかりの部屋に閉じこもっていた頃とは違う。
わくわくと少しの不安。
外へ出て、少し心境の変化でもあったのだろうか。
スクールで学んだことが書いてある小さなノートを開き、ちょっと自信ありげに俺なら大丈夫だと表情が言っている。
ならそれに応えるのがパートナーだろう。
まだまだお互いに、特にジゼルが未熟だとはいえ、やれることはやるべきだ。
……まあ、そのジゼルの決定に文句を言うのがいくつかいるが。
『なんでルルなの!?僕は!?』
『ヒエン、あなたはほのおタイプですからあいしょうがわるいんですよ』
『あたしは!?あたし草タイプなんですけど!!こんなヒヨコより相性抜群じゃない!』
『お前は手持ち入りしたばかりでジゼルがお前の技やバトルの仕方を全くわかってないからだろう』
ぎゃあぎゃあ騒ぐヒエンとミドリを宥めながら溜め息をひとつ。
騒ぎ始めたふたりを見てジゼルはぱちぱちと瞬きをして首を傾げた。
そんなジゼルにレインがテレパシーでふたりの言葉を伝えると、ジゼルは考え込むような表情を浮かべる。
スクールに行かなきゃ遠慮なくヒエンもミドリも出してたんだろうな。
ただバトルがしたいだけならいいかもしれないが、帰りたがってるこいつはなるべくスムーズにバトルを勝って終えたいのだろう。
そりゃあそうしたいのならそうすればいい。
俺はジゼルに着いて行けるのならなんでもいい。
まだ僕があたしがとアピールされているジゼルに視線を向けて一言。
『ジゼルの好きにしたらいいだろう。俺は応えてやる』
「……うん、ありがとうルル」
レインのテレパシーを介さなくても自然と俺の気持ちはジゼルに伝わる。
嬉しそうに表情を綻ばせるジゼルに、俺も思わず表情が和らいだ。
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