あ、これはガチなやつだ。
床に体を押さえつけられ、額にピタリと当てられている冷たい銃口。
サイレンサーがついてるのはここが私の家だから。
そりゃ一応マンションの1室だしね、銃声したら事だもんね。
鍋焦げ付いちゃう、今日はカレーにしようと思ってちょっと多く作ったんだけどなあ。
ま、それどころじゃないけれど。
いつも軽いおふざけのように軽口叩くけどそんな雰囲気じゃないな、何度も言うけどガチなやつ、割りと本気で殺るつもりだろう。
まさかここでおしまいな感じか、まだ少年探偵団のみんなとキャンプ行ってないのに、コナンくんに話を聞いてもらってないのに、私≠ェ割り切れるようにしたのに──園子と、もう少し遊びたかったのに。
ジンのトリガーにかかる指先に力がこもる。

「……」

「……」

頭なら痛いのは一瞬だもんな、滅多なことがない限り苦しむことはなく逝ける。
これ何mmの口径だろう。
また前いた世界に戻れるかな、まだあそこにもやり残したことがある。
──どちらに転んでもいい、この死ぬ瞬間を早めに終わらせてくれないかな。

「……少しは抵抗しろ、調子が狂う」

「抵抗無意味かなって思ってさ」

「掃除機やら椅子やらでいつも応戦するじゃじゃ馬が何を言ってんだ」

「それはジンも殺る気ではなかったからじゃん。あ、殺る理由聞ければいっかな」

どうせここで死んでも次の瞬間には別の世界だ、いつものこと、何回も繰り返されてきたこと。
きっと諦めたように見えてるんだろうなあ、死ぬのは怖いとは思ってるんだけどなあ。
ジンは舌打ちをすると銃を下ろして私の胸倉を掴みあげた。
ちょ、ちょっと苦しいんですけど!

「お前にゃ耳にタコができるレベルの内容だがな──本気で、組織に加わる気はねぇか」

いつもの顰めっ面とはまた違った真面目な顔に思わず目を丸くする。
ウォッカが言ってた、ジンがそこまで目をかけるのは珍しいと。
バーボンが言ってた、私にこのあったかな表側は似合わないと。
それでも、私が居たい場所は……

「私は日陰で生きることができても大好きな日向にずっといたいと思ってるよ」

「……賢くはねぇな」

それは私も思う、生きたいなら嘘でも首を縦に振るところだろう。
まあでもさあ、いろんな日陰も日向も歩いてきたけれど、どっちかなんてすぐには決められない、元から決めてない限りは。

「かと言って日焼けしちゃうから日陰に入りたい時もあるけどね」

「わがままな女だな」

「知ってる」

ジンが鼻で笑ったのを見て私もヘラッと笑った。
胸倉を掴んでいた手が放され、私が後頭部を打つのはその直後。
……そろそろ、いろいろ決めなくてはならないのかもしれない。


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