ちょっと極東綺羅さんという人について話そうと思う。
園子の従姉妹だというその人は全く園子に似てなかった。
外見も中身も。
人離れしたような目の色が特徴的で、初めて会った時は本当に人間なのか一瞬現実離れした考えが過ぎったのを覚えている。
まあでも話すといい人だ、たまに言葉や素行が荒くなったりするけれど。
あとは何より、園子を溺愛してるんだなって。
園子に向ける表情はどれも穏やかで柔らかい。
そんな綺羅さんの雰囲気が変わったなと思ったのはミステリートレイン……ベルツリー急行に乗ってからだ。
その直前まで何か悩んでいるような、考え込んでいるような、そんな表情が多くなっていたのに吹っ切れたというかなんというか。
まるで似たような人になっていた。
「園子、クリームついてるよ」
「あ、ありがと綺羅姉」
園子の口元についてるクリームを指摘する綺羅さんの表情は穏やかだ。
蘭も綺羅さんとは仲が良くて、こうやって蘭と園子、俺と綺羅さんで出かけることは多い。
俺の正体を聞いてきた時の綺羅さんは少し怖かったけど、組織の人間ではないし味方だと思う。
赤井さんも彼女を褒めていた。
コンビニ強盗に出会した時にすぐ犯人を昏倒させた素早さと拘束した技術は一般人と少しかけ離れていたらしいけれど。
確かに逃走しようとした殺人犯の後ろからドスの利いた声と共に跳び蹴りするだけのことはあるよな、ほんとに。
「綺羅姉はさ、今好きな人とかいないの?」
「園子のことは大好きだよ」
「そうじゃなくって!!嬉しいんだけどそういう意味じゃなくて……!」
「知ってる知ってる、恋愛の方でしょ?」
「それは私も気になります!綺羅さん、素敵ですしそういう人いたらどんな人だろうって」
きりっとした表情で園子が好きだと言った綺羅さん絶対ガチだった……
すぐに表情を崩して、蘭と園子の問いにアイスティーを口にしたまま考え出す。
「いないかなぁ……あまりそういうことも考えないし」
「えー!?なんで?楽しいじゃない!」
「わかるんだけど、ちょっとね……他人にとっても好きな人を被せるのってしんどくなるから」
笑ってはいるけれど、寂しそうな悲しそうな、そんな表情。
ころころと彼女は表情が変わる。
同じように感情も豊かで。
誰かと別れたのか、それとも喪ったのか。
少なくとも高校生である俺たちじゃもう踏み込めないような、そんな表情と言葉だった。
「まあ今はひとりでいいんだよ。こうやって園子や蘭ちゃんともお茶できるしね?」
それとも、私とこうやってお茶するのは苦手かな?
いたずらっ子のように綺羅さんが笑うと、ぽかんとしていた園子が「そんなわけないじゃない!」と顔を赤くした。
本当に不思議な人だと思う。
悩むような表情をしなくなった綺羅さんは、確かにここで人生を謳歌する人だ。
……願わくば、組織やFBI、公安に巻き込まれないように。
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