思わずはっとした。
慣れた感覚、だけど心臓はドキドキしていて。
飛んだ≠フか。
周りを見渡せば窓の外の景色は動いていて、何かの交通手段に乗っているようだ。
このスピードは……電車?
思い出せ思い出せ……そう念じて目を閉じれば、ここ≠ナの記憶が浮かび上がる。
私は、極東綺羅。
米花町に住む、東都大学の女子大生。
それなりに優秀な成績を修めてきたから特待生ってことで学費も免除されている、周りから見たらまさに優等生。
両親は健在、ただ仕事の関係で父は海外へ出張中、母は北海道へ出張中だ。
そして私は従妹の鈴木園子に誘われて半ば無理やり連れられるように、ミステリートレインに乗車した。
……よし、思い出せた。
事件は解決して、最後尾の車両が爆発し、今は最寄りの駅へ向かっている最中。
直前≠ワでガチの殺し合いしていたからとても変な感覚だ。
体は痛くないし怠くない。
こんな感覚、慣れるわけないな。
ふーっと息を吐く。
口の中に広がっていた鉄の味もない。
本当に飛んだ≠フか。
あそこでやり残したことあったのに。
「あ!いたいた、綺羅姉!!」
「園子」
「大丈夫?顔色悪かったから追いかけてきたのだけど」
「大丈夫。いろんな騒ぎがあったから少し疲れただけだよ」
「戻りましょ、何か飲んだら少し落ちつくわ!」
ぐいぐいと私の腕を引っ張る従妹の姿に思わず笑みが零れる。
私が飛んで≠ュるのを、私≠ヘ察していたのかもしれない。
飛んだ$謔フ前の自分が何を思っていたのかは知らない。
私は私≠フ気持ちを知ることはできない。
何があったのか、今まで何をしてきたのか、過去のことしか知ることはできなくて、現在と未来のことは全くわからない。
「でも残念だ、次郎吉おじさんに会えないで停るのは」
「ほんとよねー、きっと名古屋で憤慨してるわ」
「また今度会えばいいよ。その時は一緒にお土産持って行こう」
「もちろん!!」
こうやってすらすらと出てくる言葉は私のものなのだろうか、それとも私≠フものなのだろうか。
でも、きっと、ここでの極東綺羅の言葉であることは間違いないだろう。
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