極東綺羅上等兵は優秀な兵士だ。
戦闘技術はもちろん、頭も悪くない。
たまにポロッと零す提案が作戦に反映されることも少なくない。
人間関係も見たところ良好のようだ。
日本人特有の真っ黒な髪と、見たことのない真っ赤な目。
伸ばした前髪が目元を隠しているが、ちらりと覗くそれは誰もが目を奪われる。
さすがに戦線で活躍していた時は髪を丸刈りにしていたが、日本に帰ってきてからは前髪で目元が隠れるまで伸ばしたようだ。
その髪型の方が何故かしっくりくる。
「尾形が造反組なのはショックですわ……マジか……」
そして今、病室で極東は落ち込んでいた。
さっきまで「クソ尾形ァァァァ!!」と叫んでいたのにこの変わりよう、親しかった戦友が敵に回るのは彼でも落ち込むらしい。
撃ち抜かれた足からは弾を既に摘出し、傷口も縫合済みで、抜糸を待つだけだ。
こちらとしては尾形と親しかった極東が造反組でなくて少しほっとしたというか……
そのことを伝えると、極東は歯を出して笑う。
「そりゃあ親しい戦友を取りたいところですけど、俺は極東綺羅≠認めて理解してくれた鶴見中尉の方が大切に思っちゃってるんです。それを理解までしてくれる人って、鶴見中尉以外にあんまり出会ったことありませんから」
尾形には悪いけれど、と寂しそうな表情を浮かべた。
情に厚いのだろうけれど、必要な時に切り捨てられるのか。
それを強さというのか薄情というのかは、知らないが。
「尾形の隣に並んでいるお前はなかなか絵になってたがな」
「……そうですかぁ?」
うわ、すごく嬉しそうに笑ってる。
鶴見中尉に懐いているし尾形に懐いている極東は、なんだか不思議だ。
デレデレと緩んでいた顔をスッと真面目な表情に戻し、極東はぼそりと呟いた。
「けれど、もう並べそうにないですね」
そんな未来は来ない、と。
わかっているようだった。
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