思わず、つい、そんな言葉がしっくりくる。
園子が凶刃に晒されるならいつも以上に体張りますとも。
大切な子を傷つけさせないために、各組織に目を付けられようが知ったことか、この私の、極東綺羅の、大切な子を守ることと天秤に乗せずとも明確だろうが。
グッバイ平穏な日々、なんてね。
そんなことを思いながら私は今冷たい床に倒れていた。
いやさ、園子を襲おうとした犯人さんと園子の間に入ったのはよかったのよ。
そのままいつものように凶器を握ってる腕を締め上げてもよかったんだけどさ、場所が狭かったからかな、すぐ近くに園子がいるし変に動いたら傷つけちまうよなーって判断できて、できたら動けなくて「あ、詰んだわ」って感じで刺されて。
「綺羅姉!しっかり!!」
いってえよちくしょう。
慣れてても痛いことはしたくねーな、マジで。
犯人は蘭ちゃんの蹴りで昏倒したらしい、さすが空手少女。
目が覚めたらしい毛利さんが救急車を手配する声が、パタパタと動き回る音が、やけに大きく届く。
──死にたくない。
やめて、私から取り上げないで。
まだたくさんこの世界で約束しているんだ。
まだ少年探偵団の子どもたちとキャンプ行ってない、あのいけ好かない童顔をけちょんけちょんにしてない、まだ、園子とやりたいことたくさんある。
やめて、私をここから連れて行かないで。
「……い、きたく、ない」
混乱もしてたんだろう私はその場にいる全員に多大な誤解を招く発言をして意識を飛ばした、ほんとごめん誤解です。
そんなことを病院のベッドの上で思い出して顔を覆った。
ごめん、誤解なんだわマジで。
見舞いに来てくれた蘭ちゃんや世良ちゃんが戸惑ったような顔をしていた。
少年探偵団の子どもたちは泣き出しそうな顔で千羽鶴をくれた。
阿笠博士と哀ちゃんは複雑そうに、けれど何も聞かなかった。
毛利さんは人生相談くらいなら乗ってやると言い残していった。
目暮警部や佐藤刑事たちは私の行動は立派だと褒めて、その上で将来は警察関係者に──と先を提案してくれた。
コナンくんはめっちゃ怒ってた、小学生って怒ると怖いんだ。
園子は──来ない。
「そりゃあ来ないというか来づらいでしょう。従姉が自分を庇ってしかもいきたくないって言えば、ねえ……?」
「生きたくないんじゃないんだよ逝きたくないんだよ……!!びみょーな違い昴さんならわかるでしょう!?」
「死に際の一言ですとどちらなのか判断しかねますね」
「それでも院生か!」
「あまり関係ないのでは?」
大きな声を出すとまた看護師さんに怒られますよ、と昴さんに注意された。
身近な年上に相談してみよう、と思ったけど相談したところで誤解は解けるもんじゃないらしい。
昴さんにはこうやって説明したけれど他の人たちにうまく説明できるとは思わない。
マジで誤解なんだってえええええ。
「……だって、連れて行かれそうだったから」
「はい?」
「約束とかやりたいこととかあるのに、いきたくないもん」
そこまで言ってさらに思い出した。
そういや私にとっての死と普通の人の死ってちょっと違うじゃん。
だからか、そりゃあ通じないわ。
つーか説明するとしたらそこからだわ、しないけど。
「……」
「何か決めましたか」
「退院したら園子に会いに行く」
あの子、きっと来れないだろうから。
私がちゃんと行かなきゃだめだ、私からアクション起こさなくちゃ。
誤解解けるかわかんないけれど、けれど、決して園子を言い訳に死にたかったわけではない。
むしろ私は生きたい人なので。
醜いって言われても、抗える範囲は抗うので。
「すっきりしたらお腹空きました」
「お腹刺されてるからしばらく控えてくださいって言われてませんでしたっけ?」
「……やっぱだめですかね……?」
「だめでしょうね」
とにかく早く君に会いに行こう。
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