「綺羅お姉さん!今度キャンプ行こう!!」

そう、声をかけられたのはいつだったか。
大学の帰りだ。
受けている授業が午前中までだったからすぐ帰路について適当なファミレスで課題をやりながらお昼にしている時、偶然少年探偵団と名乗るいつもの子どもたちが阿笠さんに連れられてやってきた。
広めのボックス席にいたから、相席する?と提案して課題をしていたノートを鞄に入れて場所を空ける。
みんなが注文するものがらしくって、思わず笑みが零れた。

「いいの?こんな年上のお姉さんが混ざっちゃってさ」

「もちろん!だって大人の人は博士だけだし、来るとしたら昴さんだから女の人も来てほしいの!」

「阿笠さんやみんながいいって言うならお邪魔しようかな」

ドリンクバーで淹れてきたアイスティーにガムシロとミルクを入れて、ストローで混ぜる。
隣に座っている歩美ちゃんは笑顔で「お願い!」と私を見上げた。

「綺羅お姉さん、いつも行くって言って用事が入ったーって言って来ないんだもん!」

「そうですよ!!いつも歩美ちゃん、落ち込んでいたんですよ!」

「嘘ついたら針千本飲まなきゃいけねえんだぞ!」

「……ああ、そうだったね」

なんで、私≠ヘそんな嘘をついたのだろう。
その日は何も用事は入ってなかった。
結局家から出ないで、提出期限がまだまだ先のレポートをやっていたんだ。
1日この子たちに付き合ってたって余裕があったのに、なんでだろう。
──きっと、眩しかったのだ。
自分の幼い頃の記憶はあっても思い出はないから、羨ましくて眩しくて。
泣いてしまうと思ったのだ。

「今度は必ず行くよ、約束する。破ることがあったら……そうだな……歩美ちゃんには可愛いアクセサリーを、光彦くんには最新モデルの音楽プレイヤーを、元太くんにはご飯食べ放題なんかはどうかな?」

針千本飲み込むより痛くはないし、どうだろうか。
そう提案すると、3人は目を輝かせる。
凄く魅力的なんだろう、でも、とすぐ表情を陰らせて私の様子を伺うように視線を向ける。
はは、私がズルいこと言ってるのはわかってるよ。

「嬉しいけど、お姉さんと遊びたいし……」

「絶対キャンプ来いよ!そこで美味いメシを作ってくれ!」

「ぜひ一緒にキャンプ行きましょう!」

「そうだね、いつ頃か教えてくれるかな?その周辺の予定は空けておくよ」

手帳を開いて言えば、パアッと揃って明るい表情になった。
阿笠さんもそこに加わって、この辺だの場所はあそこだの、賑やかにキャンプの計画を立てていく。
──ああ、せめて。
この楽しそうなキャンプが終わるまででいいから、私がここにいれますように。


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