「……やれやれ、まさかこんな真っ最中に飛ばされる≠ネんて」
ねえ、牙狩り諸君。
自然とすらすらと言葉が出てくる。
ビルを始めとする建物の瓦礫の上から無駄に頑張っているただの人間たちを見下ろした。
俺は、血界の眷属。
それなりに長く生きてきた。
今の俺はキラ≠ニいう通称で生きていて、諱名はクッソ長い。
キラは俺の名前だし、俺≠烽サれをわかっていてキラと名乗っていたのだろう。
目の前の牙狩りたちとはそれなりに長く渡り合ってきている、言わば宿敵というのか腐れ縁というのか。
「俺は滅多なことじゃ人喰わないし危害を加えないって言ってるのに、なんでこうも見かけた瞬間喧嘩を吹っかけるんだろうね?」
そうやって喧嘩を吹っかけたから、それに巻き込まれてただの一般人たちが死ぬんだろう?
そう言えば赤髪の大男は苦虫を潰したような表情で俺を睨む、ああ怖い怖い。
このHLは生きやすい。
周りを見れば異形、異形、異形。
溶け込みやすいのだ。
何度かここへ飛ばされた≠アとがあり、ここは数少ない生きやすい世界だと思っている。
──こうやって、殺し合いを吹っかけられなければ。
「義眼の少年も、俺の名前は見づらいだろう?その貴重な目が焼ける前にやめた方がいい」
「っ……!」
「よく知る眷属たちが封殺されるというのかな、そうやって君たちに封印されてるのは知ってるよ。名前が俺たちの弱点であるからね、でも──」
「……あなたの、名前は黒ずんで読めない」
青く綺麗な義眼を瞬かせて少年が口にする。
きっと、こうやっていろんな世界へ飛んで≠「るからだろう。
その特殊な体質というかなんというか、それの恩恵にあやかってどうやら俺はどこでも死ににくいらしい。
なんて迷惑だ。
どうせ、そこで死んでも他のところでは生きてるからだろ。
死ぬためには同時にそれぞれの並行世界で死ななくてはならない。
無理だっつー話だ。
「だから、手を引いてくれないか。俺はついさっきまで普通の人間と同じように昼食にしてただけなんだから。久々の、あったかいご飯だったのにな……」
「……貴公は、」
「だからってHLから出るわけじゃないけどな」
ではご機嫌よう、牙狩り諸君。
その拳も脚も焔も弾も風も、俺に届かないともっと思い知ってくれ。
あわよくば、もう追わないでくれ。
体を四散させ、俺は瓦礫だらけの場所から消えた。
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