そんなに怯えなくても取って食べやしないのに。
コーヒーカップを持ち上げ、口をつけながら目の前の少年を眺める。
神々の義眼を宿す少年。
この世界で血界の眷属にとっての天敵に成りうる存在。
……ま、俺の名前は見えないからいいんだけど。
「腹減ってないのか?裏で行き倒れみたいになってただろう」
それとも違うものが食べたいのか?
そう聞けば、恐る恐る目の前のサンドイッチに手を伸ばした。
なんてわかりやすい警戒。
牙狩り以外にそうやって警戒されたことがないからつい笑ってしまう。
クスクスと思わず笑っていると、少年が怪訝そうな顔をする。
そうだな……猫が鼠を追いかける気持ちもちょっとわかるというか、ね?
「何もしないよ。俺は他の血界の眷属と違って無闇矢鱈に人を襲わないし血だって滅多に飲まないからね」
「……でも、この間は」
「あれはこの俺を血界の眷属だと君が見破ってそれを牙狩りに報告したからだろう?俺は平和主義者ってほどではないけど平穏を好んでいるからな」
あくまで俺はね。
俺≠熕iんで血を飲んだり人を襲ったり、眷属をつくったりはしなかったから根本的なところは同じなのだろう。
眷属とか面倒だ、屍喰いなんて以ての外。
長老級とも関わろうとは思わない。
長老級と関わったところであいつらに近い俺は最悪殺される気がする、勘だけど。
……苦しく喘ぎ悶えるのは懲り懲りだ。
サンドイッチをひとつ食べ終わった少年のためにウェイターを呼び止め、コーラを頼む。
「ああ、少年も無理に諱名を見るのは控えた方がいい。特に長老級のやつらのは……その義眼で見れても少年に負担がかかるんじゃないのか?」
「前に永遠の虚を覗き込んだんです……その時、あなたと同じ緋色の羽がたくさんあって、やつらの巣窟みたいで」
「名前以外に見分けるやつ?それ聞けてよかった。永遠の虚には近づかないようにしよう」
ウェイターがコーラを持ってきたのでそれを受け取り、少年の前に置くと大分警戒心の薄れた少年はそれに口をつけた。
そうか、永遠の虚か。
いいことを聞いた。
「そんな少年に、お礼ってわけじゃないが、困ってたら俺の名前を使うといい。何かあったら呼ぶといい。駆けつけて助けてやろう」
「はい?」
「ちゃんと名前を教えるからな。それに知ってるやつは少ないし、呼んでくれりゃあ聞こえる」
「へ?」
「俺はキラ・キョクトウという名前でHLで生活している。よろしくな、義眼の少年」
ぽかんと口を開ける少年の名前を聞くのはそれから少ししてから。
レオナルド・ウォッチ、いい名前じゃないか。
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