「いくらこの時期でも海水浴は風邪引くっスよ晃」
「……それ高杉さんに言ってよ」
どうも、私神崎晃は現在不本意ながら海水浴してます。
来島さんは溜め息を吐き、それから眉を下げて笑った。
稽古の後半であの人にグーで殴られたついでに甲板から落とされたのだ。
なーにが喧嘩は刀だけでするもんじゃねェからなだよ喧嘩じゃねーよ。
グーだぞグーパン、容赦ねえなあの人。
ここのところ顔面に木刀直撃は減ったんだけどちょっと油断したらこれだよ。
それにしても海って本当にしょっぱいんだ、普通の水と海水の何が違うのかよくわからなかったけどよーくわかった。
塩水だ、そりゃしょっぱいわ。
涙と同じ味がする。
「おや晃さん、まさかこの猪女にいじめられて落とされましたか?」
「誰がやるかァァ!!人聞きの悪いこと言うなッス!私は稽古終わりの晋助様と晃を労りに来たんスよ!!」
「いじめられてたらいつでも言っていいんですからね」
「無視かロリコン!」
「だからロリコンではないとあれほど……」
来島さんも武市さんも元気だな……漫才か。
武市さんが落としてくれた救命浮き輪にしがみつき、ほっと息を吐く。
ぎゃあぎゃあと言い合ってるのに周りの人たちが止めないのはいつものことだからなんだろうか。
そんなに周りを見る余裕がなかったからなんか新鮮だ。
2人が騒いでいるからか、近くにいたおじさんが「今上げてやるからなー」なんて笑いながら縄を引いた。
落ちないように、ちゃんと浮き輪にしがみついている横で武市さんとすれ違う。
……まあ、要は武市さんが来島さんに落とされたわけで。
派手な水飛沫が上がるのを横目に甲板に上げてもらった。
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