海水でびしょ濡れのベタベタになったからお風呂をいただいた。
まだ明るい時間だけどいいか、稽古も終わったし。
部屋に戻ってタオルで髪を適当に拭く。
この部屋の窓から見えるのは水平線だけ、日が沈むにはまだまだ時間があるから水面はキラキラと煌めいていた。
あの田舎で見るのとは違う景色、違う匂い。
窓際まで近づいて座り込み、食い入るように海を見る。
キラキラしてる、そういえば刃もキラキラしていた。
キラキラというよりギラギラが正しいだろうけど。
夕暮れの川もあんなふうにキラキラしていたけど、規模が違う、すごい、綺麗。
「見ていて楽しいかィ」
後ろから声をかけられて肩が跳ねた。
振り向くと煙管片手に気怠そうな顔をした高杉さんが。
この前私がやった頬の腫れはもう大分引いていた。
私?私の頬はいつも湿布貼ってるので察してくれ。
ご飯食べれるくらいの腫れだけどね。
「ああ……お前のところは海から離れていたんだったか」
「知ってるの?」
「迎えに行ったろ」
あれは迎えっていうかばーちゃんへの用事ついでに私を押し付けられたっていうか。
本当はどうだったか知らないけれど。
高杉さんから視線を外して改めて海へ向ける。
海ってどのくらい深いんだろう。
さっき落とされた時は足なんかつかなかった。
どのくらい潜れば足がつくんだろう、案外つく場所なんて海辺くらいなのだろうか。
…-知らないことだらけだな、そんだけあの田舎が狭かったってことなのかな。
寺子屋なんか行ったことないけど、あそこで生きていける知識とか常識はばーちゃんに教えてもらった。
けれど、外の世界はそれだけじゃ足りなさそうだ。
天人だって実際に見たことほとんどないし。
「やる」
コト、と置かれたのは何かがたくさん入った小瓶。
「……星の詰め合わせ」
「菓子だ。金平糖」
「こんぺいとう……」
「お前くらいの小娘はそういうの好きだろ」
またそうやって小娘っていう。
けれど色鮮やかなそれは興味をそそられるものであるのは確かであって。
小瓶から1粒取り出し、口に含むと広がる甘さに少し自分の表情が緩んだ気がした。
「……ガキ」
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