追われているであろう人が私の横を通り抜けようとする。
制止の声、追ってくる黒服複数人、追われてる人の手に不釣り合いな女性物の鞄。
あ、ひったくりか。
そこから行動をしたのは無意識だった。
行動、と言っても大それたことはしていない。
ただ、ちょんと足を伸ばしただけのこと。
足下が疎かになっていたひったくりさんは面白いくらい予想通りに私の足に引っかかり、そして予想以上に派手に地面に倒れ込んだ。
……人間、あんなに綺麗に顔面から地面にダイブするもんなんだなあ。
黒服の人がひったくりを取り押さえているのを見ながら地面に落ちた鞄をしゃがんで拾い上げる。
砂まみれになったそれを手で叩いていると、ふ、と影がかかった。
「あー……悪ィな嬢ちゃん」
「いえ……」
常に瞳孔開きっぱの人っているもんだなあ……
もう驚かない、ここは江戸、天人もいれば死んだ魚の目をした天パの人や瞳孔開きっぱのチンピラっぽい人もいるんだきっと。
立ち上がって鞄を渡す。
……あ、時間やばいかな。
──出かけるのもいいが今日はまた取引に行くからこの時間にここまで来るでござるよ。刀?包んで持ち歩けばよかろう。職質されたらこれから稽古ですとでも言えば平気でござる
不満そうに煙管を吹かしていた高杉さんの隣で河上さんが保護者らしいことを言っていた。
「ついでにと言っちゃなんだが、その背中のは?」
「これから稽古があるので必要なものです」
見ます?と言えば目の前の人は首を横に振る。
あー意外と平気なんだー。
こんな田舎から出てきた小娘が高杉さんに稽古つけてもらってるなんて知ったらびっくりするだろうな。
特に事情聴取とかはないようで、ぺこりとお辞儀をして指定された場所に向かって足を進めた。
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