ひんやりとした手が私の頬を撫でた。
骨張った指が目元を擽るように往復するもんだからくすぐったくて目を開く。
大分見慣れた天井と、普段見ないような顔をしたあの人。

「……たかすぎさん」

「よォ、調子はどうだ」

普段の容赦なさが嘘のような手つきに少し動揺するんだけど。
起きなくちゃ、と体を動かしたけど突然襲う痛みに布団に沈み、またその衝撃で痛むもんだから歯を食いしばって髪を掻き毟るように掴んでそれに堪える。
痛い痛い痛い痛い、背中が痛い、焼ける、火傷してるような、凍傷してるような。
今まで木刀で顔面を殴られた時なんかと比べもんにならない、こんな痛み知らない。

「命に別状はねェが深い傷だ。帯はだめンなっちまったが助かったな」

そうだ、指定された場所で、真選組とかいう黒服の人たちと、斬り合いが始まって、後ろ取られて、茶髪のやつ、自分と年齢変わらないやつに斬られて、倒れた。
それからはわからない、でもここにいるってことは助けてもらったんだろう。
仰向けになったままが辛くて背中の痛みを我慢しながら横向きを経て俯せになる。
自分の体重で圧迫していた分、軽くなったけれどそれでも痛みは変わらない。
枕に顔を押し付けて布団を握りしめた。
あの茶髪のやつ、顔覚えたから今度遭遇したら1発ぶん殴ってやる……高杉さんの次に。

「……怖かったか?」

「……痛い方が大きい」

怖いなんか出る前に斬られたからだと思うけど。
でもここが高杉さんの身の置く場所だと、殺し合いが起こる度に実感させられる。
人の死なんて、目の前で見たくなんかなかった。
怖い、のは確かだ。
だって、私はあんな風に死にたくなんかない。

「傷が塞がるまでは稽古はなしだ。取引にも連れてかねェ。しばらく船で雑用の手伝いでもしてろ」

「……はい」

枕に顔を押し付けているから高杉さんの顔はわからない。
けど、くしゃりと髪を撫でてくれる手は優しかった。



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