「ということを話してきた」

「随分仲良くなったじゃねェか」

「もっと晃と話せばよかろう。意外と話すぞあの娘は……まあしばらく毒を吐きそうな気がするが」

──あの人を師とはまだ思わないよ。あれ稽古じゃないから、ただボコられてるだけだから
あれは随分根に持っていた。
さすが晋助の顔面を殴っただけのことはある。
そんな晃は今、また子と風呂だ。
近くを通った時に「下の名前で呼ぶっス!また子さん!!リピートアフターミー!」「来島さん」「また子さん!!」「来島さん」なんてやり取りが聞こえたから女子らしくキャッキャしてるのだろう。

「余計なことは言ってねェだろうな?」

「拙者も知らぬことは言わんよ」

恩を返す、というのならあの娘はあの田舎から連れ出さずにこの世界を壊せばよい。
なぜ連れてきたのか。
あの娘が恩人の娘だから、なんて簡単な理由ではないのは確かだ。
晋助は煙管を咥えたまま目を伏せた。

「……約束してんだ。あいつは知らねェだろうがな」

そのまま浮かべる笑みはいつもの不敵なものではなくて。
きっと晃は見ることできないのだろうな、見たら見たで「うわ嵐来るわこれ」なんて言いそうだ。

「だーかーらァ!来島さんなんて他人行儀な呼び方じゃなくて名前で呼べって言ってるんスよ!!」

「来島さん」

「また子!」

「来島さん」

「ま た 子!」

「来 島 さ ん」

パタパタと足音が聞こえる。
……まだその話か。
足音が近づいてくると、晋助は話は終わりだと言わんばかりに煙と共に息を吐いた。
拙者も部屋に戻ろうと、立ち上がった時に襖が開く。

「呼ぶまで諦めないっスよ!」

「諦めようよ……」

鼻息の荒いまた子とげんなりとした晃に思わず笑みが零れた。



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