痛かった。
泣きたいわけじゃない、痛くて自然と涙が出てくる。
口の中が不味い。
鉄の味、血の味。
世界が狭い。
そりゃあ、床に這いつくばっているんだもの、視界が狭いからそう感じるんだろう。
自分がしっかりと握っていたはずの鞘に納めたままの刀が目の前に転がっていた。
のろのろと顔を上げて、視線を上げる。
その人は、酷くつまらなさそうな顔をして私を見下ろしていた。
わざとらしく溜め息を吐くと、手に持っていた木刀を私に放ると背を向ける。
そんな顔されても、困る。
この船に乗って5日、初めて真剣を手に取って5日、察してほしい。

「何度も同じことを言わせんな。真っ直ぐ過ぎる」

なら何度も同じことを思わせないでほしい、アンタと経験値を同じにすんな。
赤く、を通り越して青くなってそうな横っ腹を抑えて咳き込む。
食事前でよかった、吐くのは嫌だ。
なっちゃいねェだの宝の持ち腐れだの言われながらこれが稽古とか、武士とか侍は自分を痛めつけるのが好きな人間たちなんだろうか。
そもそも宝の持ち腐れとか、ただ運動神経がちょっといいだけなのに。
あれだあれ、クラスに1人いる運動に出来る子並。
それを真剣で殺し合いするような人と同じ括りにしないでほしい、全然違うもん。

「……明日は少しマシなところを見せろよ」

アンタがマシじゃねえんだよ。
口を動かすと痛いので、その背中にとりあえず目で訴えておいた。
動くのは痛いけれど、私に、と渡された刀を取り、ゆっくりと体を起こす。
懐から煙管を取り出して吹かしているのを見るに暫く船内に戻らないだろう。
木刀も拾い、一応頭を下げてから私は船内に足を向けた。


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