迷子ってこんな気持ちか。
自分が何処にいるかわからなくて、何処に行けばいいのかわからなくて、とてもとても不安で怖くて寂しくて、途方に暮れそうなくらい混乱している。
私って誰?
家はどこ?
なんでここにいるの?
そんな私の様子に気がついたのか、その人は私を宥めるように背を擦る。

「あー……うん、とりあえず落ちつけ。そりゃわかんなかったら混乱するよな」

掛け布団を握りしめて俯いたまま視線をその人に向ける。
どこかで見たことある表情だ。
どこでいつ見たかなんて、わからないけど。

「保護者は?あちこち回ってる保護者いんだろ?」

「……わかんない」

「……お前、名前は?」

名前。
私、私は……私の名前は……
──なんだっけ?
ヒュッと息を飲む。
心臓が冷えていくような感覚。
当たり前のことが出てこない、知ってるはずなのに、生まれた時からそれを知ってるのに!
なのに、わからない、知らない、おぼえていない。
なんで、なんでなんで。
自然と熱いものがこみ上げてきて、それはぽたぽたと零れて布団を濡らす。
目の前の人はぎょっとしたような表情を浮かべたけれど、すぐ元の気の抜けた表情に戻ると傍らの手ぬぐいを私の目元に押し付けた。
その手ぬぐいを握りしめて嗚咽を殺すようにして蹲ると優しく背中を撫でてくれる。

「知らねェモンはしょーがねーよなァ……」

大きくて温かい手が背中を行き来する。
それに少し安心して手ぬぐいの隙間からその人を見ると、不思議な色の目とぱちりと合った。

「だいじょーぶ、銀さんお前と知り合いだし」

「ほ、んと……?」

「おう。俺は坂田銀時で、お前は神崎晃」

神崎晃、晃……私の名前。

「しばらくここにいろよ。ちゃーんと面倒見てやっから」

頼れる人なんてわからなくて。
でもこの人は頼っても大丈夫そうで。
坂田さんの言葉に何回も頷いた。



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