「坂田さん、手を繋ぐの好きなの?」
「へ?」
昼飯を終えてふらふらしながら万事屋へ帰る道の途中、晃が俺を見上げてそう口にした。
俺の左手はしっかりと晃の右手を握っている。
迷子になったら大変だと思ったから。
自分の名前も忘れてしまった晃がはぐれたらどうなるのか、きっとこいつは不安で不安で、押し潰されるのだろう。
「あー……お前の手って柔らかいし?」
「……」
「今のナシ!そんなあからさまにドン引きした顔しないで晃ちゃん!うわあ、って口に出てるからね!?」
ぐいぐいと俺から手を離そうとしている晃が必死過ぎた。
ぶっちゃけ女の子にしては固い手では
あるけども。
剣を手にしているから当たり前か。
何回も今のナシ今のナシと言い続けていると、晃は手は繋いだままだが少し俺から距離を取って歩く。
俺を見る目が完全にやばい人を見る目になってる、やばい。
元々警戒心が強いというか、大人があまりいない環境だったろうから身構えているというか……子犬みてェ。
近道をするために細い暗い路地に入ってしばらくすると、晃の足が止まって俺の腕を引いた。
握る手に力が入る。
「……どうした?」
「ここ通りたくない」
「は?」
「遠回りでいいから、あっちから帰ろう……?」
暗いところや狭いところが苦手とか、そういうものではなさそうだ。
だが明らかに様子がおかしい。
なら、遠回りで帰るか、そう思った時だった。
まるで久々に会ったかのように「よォ白夜叉」と呼ばれたのは。
聞いたことのある声だ。
10年も前に、戦場で。
あの人が死んだ時に、高杉が打ちのめされた時に。
視線を行く先だった方向へ向けると、その男はいた。
「おっ、嬢ちゃんも一緒か。手間が省けそうだな」
神崎さんの、晃の父親の仇敵。
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