「──短調なのが玉に瑕なんだよ」
何度か剣を交えた後だった。
きっと剣と刀のぶつかる音と衝撃がするんだろう。
そう思っていたのに、その言葉の直後にお腹に酷く重い衝撃がして、次の瞬間に何かに突っ込んだ。
固いもの、なんだろうこれ。
「晃!」
坂田さんの声が遠くに聞こえる。
お腹が痛い、吐きそう、苦しい、頭も体も全部痛い。
チカチカする視界で何があったのか把握しようと自分を見て、あの男を見る。
男の足は何かを蹴った後のような格好で、自分は木片と血が散らばる地面に転がっていて。
蹴られた、あの男に蹴られた。
力が抜けて体を起こせない。
ぬるりと額から頬を、頬から顎を温いものが伝っていく。
怪我、ケガしたんだ。
「あの男の娘だから筋はいいんだろうけど突っ込むだけじゃ変わらねえよ、って言われたことねェ?……あ、今は覚えてないか」
男の言葉は流れていくだけでちゃんと頭に入ってこない。
痛い痛い、苦しい。
無意識にお腹を押さえて丸まる体勢になってしまう。
けれど、耐えないと、堪えないと。
堪えて起きなきゃ、起きなきゃいけない。
胃の中身が迫り上げる感覚。
無理矢理押し込めて、丸くなってしまう体勢を起きるための体勢に変えて。
力の入らない腕にめいっぱい力に入れて、起きろ。
「……嬢ちゃんよォ、俺が育ててやろうか」
「はァ!?」
何言ってんだこの野郎。
体勢を立て直した坂田さんが声を上げた。
ほんと何言ってんだこのおっさん。
腕を突っ張って上体を起こす頃には男は私の前にしゃがみ、顔を上げた私の顎を乱暴に掴む。
「俺はさァ、10年も昔の戦争で出会ったとある男と好敵手になったの。地球人と天人、戦争なかったら親友になれたと思うね。そんな男と戦ってんのに横槍入れた挙句流れ弾で死なせたクソガキが憎くて憎くて仕方ねェ……嬢ちゃんを俺が育ててそのクソガキと当てちまえばさ、俺の鬱憤は晴れるわけよ」
……なんかイラッとした。
すっっごくイラッとした。
なんだそれ、私それ凄く嫌いなやつだ。
どいつもこいつも私を見ないの、凄く嫌なの。
あの人なんか特にそう。
私を見てるくせに誰を見てんの?
いない人間見てどうしたいの?
みえる人にでもなったつもり?
不愉快、超不愉快、このうえなく不愉快極まりないんですけど。
戻る
ALICE+