思い切り手を跳ね除けた。
動けないのが嘘みたい。
男はきょとんとした顔で、坂田さんも唖然としている。
ねえわからない?
私怒ってんだけど。

「私に、誰を重ねてるか全く知らないし、これっぽっちもどうでもいいはずなのに、ただただ不愉快だから、消えてくんない?」

「……師匠の方に似たのかね」

「知るか」

地面に座り込んだ状態のまま、男の顔面に拳を叩き込んだ。
叩き込むって言ったって、そんなに威力ないし私の手が痛んだくらいだけど。
それでしゃがんでいた体勢が崩れた男の後ろから、坂田さんが木刀を体目掛けて薙ぐように奮った。
ほとんど無抵抗の形になっていた男が建物の壁に衝突する。
壁割れてない?え?
うわあ、と他人事のように思っていたら坂田さんによって勢いよく担ぎ上げられた。
うっ、肩がお腹圧迫して苦しい……!

「逃げっからな!戦略的撤退だからな!」

坂田さんの手には私の刀、木刀はもう腰のベルトに納まっている。
あの男が怯んでるのをいいことに、坂田さんは私を担いだまま走り出した。
流れていく風景。
落ちないように反射的に坂田さんにしがみついて、ふと顔を上げると男が立ち上がってこっちを見ているのに気づく。
目がぱちりと合うと、男は愉快そうに口角を上げた。

「──」

「え……?」

何か言っていたけれど、路地を曲がる瞬間のことで、わからなかった。


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