部屋まで戻って、そのまま横になってしまいたいのを耐えて腰を下ろした。
いつの間にか私専用になっていた救急箱を開けて、稽古の時に着ている道着を肌く。
胸のサラシは解かなくて大丈夫かな、顔や腹くらいしか思い切りやられてないし。
案の定、腹には青痣が複数できていた。
ここ5日の分もあるとはいえ、大分女の子がつくるようなものではないんじゃないかな、今更だけど。
身体中の痛み故、もたもたと顔と腹に湿布を貼って唇の横に小さい絆創膏を貼る。
それから道着を脱いで、寝間着に着替え、そこでやっと一息つけた。
布団を敷くのは億劫だ、掛け布団だけあればいい。
どうせあの人は勝手に布団敷いて勝手に寝るだろうし。
あの人と同じ部屋なのも解せない、一応私は年頃の女の子なんですけど。
「あの無駄に整った顔いつかベコベコにしてやる……」
誰も聞いていないだろうから遠慮なく悪態をついて掛け布団だけを取って横になった。
……ご飯、今日はいっか。
明日、明日の朝に早めに食べに行こう。
この船に同い年くらいの人なんていないからか、それとも別に理由でもあるのか、この船にいる人たちは私に甘い。
ちょっと狡いとは思うけど、炊事の人に無理言って早めにご飯食べて、それから……それからはあの人がいないところでゆっくり景色を眺めよう。
ああでも、また稽古があるのか、それは嫌だなあ。
「……田舎帰りたいな」
なんで私はここにいるんだろう。
畳の匂いにほっと息を吐いて丸くなる。
上物の布団はあったかいし、とてもふかふかしていて気持ちがいい。
けれど私の疑問はそんなものじゃなくならなくて。
なんで、あの人に──高杉晋助さんに稽古をつけてもらっているんだろうか。
稽古やだなあ、なんて不登校児みたいなことを思いながら、襖が開く音を聞きながら目を閉じた。
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