鮮血が舞った。
パタタ、と生暖かいそれが私に跳ねる。
なにしてんだ、と怒鳴られる。
何もできてない、動けない。
だって、だって。
突如として始まった戦闘に、頭が体がついていけない。
できるのは自分を拙いながらも守ることで。
なんで、なんで、なんでこんなことになってるの。
なんで私はここにいるの。









蹲って胃の中のものを吐き出す。
ガタガタと体が震える、喉が胃液で焼かれる、呼吸が難しい、涙が止まらない。
何が取引だ、殺し合いじゃないか。
頭上から溜め息が落ちてくる。
思わず口元を押さえながら見上げると、こちらを見下ろす高杉さんと目が合った。
なんでそんな目ェするの、私は好きでここにいるわけじゃない、こんなの、無理に決まってる。
できたのはぼろぼろと涙が溢れる目で睨みつけることだけ。

「……傷はねェな」

そうぼそりと呟くと、私の前に屈んで私の体を引き寄せた。
そのまま肩に私の体を乗せると、意外にも軽々と担ぎ上げる。
意外と鍛えられてるなとか、身長河上さんより低いとか、そういえば触られたことなかったなとか、吐いた娘をしかも担ぐとか抵抗ないのかとか、思うことはあるけれど。
安心、してしまった。
ちょっと苦しい体勢だけど、吐きはしない、多分。

「ハナから上手くいくなんざ思ってねェよ。傷つくんなかったことは褒めてやる」

何言ってんだこの人。
むしろアンタにつけられた傷の方が多いし痛いんですけど?
……黙っとこ、拗れる。
それから河上さんや他の人たちと合流し、船を停めてある港へ高杉さんは足を向けた。
途中、河上さんの「拙者が晃を運ぼうか」という申し出があったけれど高杉さんがそれを却下した、なんて信じらんない出来事があったのを付け加えておこう。


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