船に戻って、厠に直行してまた吐いて、それからお風呂に入って。
少しスッキリしてからゆっくりと部屋に向かう。
体が震える、目が痛い、喉が痛い。
思い知らされた、私はばーちゃんによってとんでもないところに来てしまった。
そうだ、ここは過激派攘夷浪士である高杉晋助率いる鬼兵隊だ。
私なんかがいるところじゃ、ないのに。
帰りたい。
稽古だとか宝の持ち腐れだとかどうでもいい、あの退屈でもどかしい田舎に帰りたい。
ここへ来て1週間、寝泊まりするのに慣れた部屋の襖を開ける。
部屋の灯りは蝋燭1本だけ。
部屋の主は窓際に座って煙管を吹かしていた。
顔は整ってるからそれはそれは色っぽいんだろうけどなんでそんなもん吹かしてんのか、私未成年なんですけど。
……まあいっか。
いつの間にか敷いてある2組の布団は相変わらず1畳分離れていて、使わせてもらっている方に乗っかった時だった。

「晃」

「……ひゃい?」

今呼んだの……え?嘘、マジ?
名前を呼ばれたの初めてじゃないか?
思わず固まったのは仕方ない、だってほんとに、小娘としか呼ばれなかったような。
高杉さんは煙管を咥えたままこちらを見ていて、右手で隣を差す。
…………それは、隣に来いってか。
あまりにも今までと対応違いすぎてテンパるんですけど、ええー。
戸惑っていると、「いいからさっさと来ねェか」なんて凄まれた、解せぬ。

「……」

「……」

「…………」

いざ隣に座ったものの、微妙に距離を空けてしまった。
もう隣じゃないな、近くだな。



戻る

ALICE+