「まだ異性に効く魅了だったらいいんじゃない?私なんか同性だよ同性」
「ああ……それはそれで大変だな。女性特有のドロドロした雰囲気だったりトゲトゲした言葉のオンパレードなのだろう」
「そーそー、かと言って男に効いても困るっていうかいらないんだわ」
「我々のこれは度が過ぎる上に制御不能だからな」
「……いつから2人はそんなに仲良くなったの?」
人気のない薄暗い食堂の端で、ディルムッドと遥さんがビール片手に仲良く晩酌していた。
珍しい……というか、いつの間に?
頬がほんのり赤い遥さんは俺の姿を見ると、ジョッキに口を付けながら「こんばんは藤丸くん」と声をかける。
ディルムッドも「こんばんは」と挨拶してくれた。
……ああ、わかった、不憫2人か。
ディルムッドも遥さんも魅了持ち。
遥さんなんか女性なのにその魅了は同じ女性に効いてしまう。
何度修羅場を潜ったんだろ……知りたいような知りたくないような。
「こんな遅くにどうしたの。藤丸くん、明日またレイシフト予定でしょ」
「なんか、眠れなくて……」
「それはいけないね。何か温かいもの用意するから座って待ってて」
何か冷蔵庫にあったんだよなぁー、なんて歌い出しそうな様子で遥さんは席を立つ。
ちょっと足下が覚束ない。
そんな遥さんを見てディルムッドが俺の椅子に座らせると、遥さんを追いかけた。
はあー……意外だ。
ガチャガチャと何かを準備するような音を聞きながら2人が飲んでいたテーブルを見る。
飲みかけのビールジョッキ、あ、あれは見たことある……クー・フーリンたちがエミヤに作ってもらってたつまみ。
それに遥さんが用意したと思われる枝豆。
大分減っているな……いつから飲んでたんだろう。
少しして、甘い匂いがしてきた。
チョコの匂いだ。
「お待たせ藤丸くん。甘さ控えめのホットチョコ」
「わあ……!美味しそう」
「ただチョコ溶かして牛乳で整えただけで申し訳ないけどね」
「ありがとうございます」
ディルムッドに支えられながら遥さんが戻ってきた。
持っていたのはマグカップに入ったホットチョコ。
あつあつのそれを受け取って、息をふーふーかけて少し冷ます。
「あ、ディルムッドも明日レイシフト?聞くの忘れてた」
「いや、俺は最初こちらで待機だ」
「んじゃもうちょい飲める?」
「もちろん、付き合おう」
マグカップに口をつけながら思わず2人を見る。
恋人みたいな距離だけど、そうではないらしい。
なんて言うんだっけ、ええっと──
「まるで、2人とも親友みたい」
そんな言葉が思わず零れた。
ディルムッドも遥さんも目を丸くすると、お互いに目を合わせて、それからニカッと笑う。
「そうそう!私たち親友なんだよ!」
「男女の仲や恋人、というよりそれがしっくりくる」
おお、凄く嬉しそう。
共通点は魅了持ちってところだけど、俺が想像できないくらい似たような目に遭ってきたんだろうな……
せっかくのところを邪魔しちゃ悪いと思って、ホットチョコを早めに飲んで早々にマイルームに戻った。
翌日、遥さんが二日酔いの状態で管制室に来たのは、また別の話。
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