しまった……クーちゃんとはぐれた……
うっそマジでかクーちゃん!クーちゃんどこ!?
ひとりになるなって言われた矢先にこれだよあばばばば。
マスターじゃありません人違いです。
追いかけてくる金髪をどうやったら撒けるか考えながらひたすらにクーちゃんに声をかける。
……返事がない、ただの痛い人のようだ、私が。
いやあの金髪は見覚えありますとも私のいるはずの冬木でめちゃくちゃお世話になってるししてますとも、ギルさんのお世話面倒なんだぞ、わがままで。
えーっとえーっとあの人あんまり路地裏好きじゃなかったような……

「うぶっ」

「手間をかけさせおって……」

よしあそこに入ろう、なんて思って路地に曲がるとガツンと何かに、いや、誰かにぶつかった。
恐る恐る顔を上げると、暗闇でも僅かな光を反射して輝く金髪に、私を見下ろす赤い目とばっちり合う。
そうだ、この人サーヴァントじゃん……霊体化できんじゃん……
後退るけど、がっしりと腕を掴まれた。
やばい、やばい、切実に、ガチで。
クーちゃんどこ、命の危機を感じてるんですけど。
品定めをするような視線は見覚えがある。
あの時はギルさんがずいぶん馴染んでいたからそこまで怖くはなかったけど、この人は私の知ってるギルさんとは違う。
だって、英雄王だし。

「は、なしていただけるとうれしいんですけど……」

痛い、怖い、マジやめて。
すん、と鼻を鳴らす英雄王はそのまま私の首に顔を寄せる。
叫びたい。
ああああああ息が当たってくすぐったいというか恥ずかしいというかああああああ。

「動くな」

少し後退ろうとしたら腕を引かれて咎められた。
くすぐったいんです恥ずかしいんです離れてください。
甲冑が冷たいのもあって少し鳥肌が立つ。
少しして英雄王は顔を離し、腕を掴んでいた手を放すと今度は私の顎を下からがしっと掴んだ。
ぐいっと無理矢理顔を上げる形になって、彼と向き合う。
真正面から見つめ合うなんて度胸はないので目を逸らした。
そういえば、ギルさんが髪を上げてるところを見たことない。
たまに後ろ姿を見ることはあるけど、こうやって正面から見なかった。
いやさすがに今はまっすぐ見れないけれど。

「なかなか珍しい魔力を感じるな……ふむ……ささやかな馳走だとでも思えばよいか」

あ、喰われるわ、魂的な意味で。

「れ、令呪を持って命ずる!!クーちゃん早く来て逃げて!ガチで!!」

「この馬鹿!!」

馬鹿でいいよいくらでも怒られるからとりあえず逃げようよー!!
手の甲の令呪が1画消えると同時にクーちゃんが私を英雄王から引き離し、持っていた杖を英雄王に向けた。

「アンサズ!」

走り出すクーちゃんにしがみつきながら真っ赤な炎が向かっていく先を見る。
弓形に細められた目。
ギルさんと初めて会った時と同じ目だ。
私は、あの目を知っている。
……つーかギルさんも最初は私を喰うつもりだったのかもしれない、怖い。

「この冬木怖いよおおおおお」

「あーよしよし、はぐれんな馬鹿」

筋力Eなのに私を担いだクーちゃんに弱音を吐く。
とりあえず逃げよう、後ろは見ない、多分追っかけてくるから。


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