バルバトスのシステムをチェックしているだけだったのになんでこんな状況になっているのか。
取り敢えず両手を上げて私の顎に銃口を向ける三日月を一瞥してから顔を上げる。
「で、そんな大人数で物騒なモン向けてなぁに?」
「アンタはここへ来てまだ日が浅いだろ、だからこうやっていろいろと確認だ」
「はあ……」
大方マルバが逃げたからそれがきっかけなんだろうな。
顎に当てられてる銃口から嗅ぎ慣れた匂いがする。
スン、と鼻を鳴らして改めて嗅ぐとなんなのか把握した。
何発かこの銃を使っている。
それも新しい。
硝煙の匂いとでも言えばいいのか、鼻のきく私がわかるのはそこまでだけど。
じゃあこのタイミングで撃ったのは誰だろう。
……まあ普通に考えたら一軍じゃないのかな、ギャラルホルンとかいう連中が襲撃してきた時は真っ先に逃げたやつらだし。
正直一軍より腕の立つこの子らがやることと言えば……ありきたりな言い方をするならここの乗っ取りか。
あーあ、私がやるより先にやられちゃったなー。
あの騒動に紛れて殺っちゃえばよかったけど一応整備の仕事してたからなー、あー残念。
「一軍はここを出ていく、アンタはどうすんだ」
「出てっても職にあり付けないから残るけど」
「つーかお前マルバの女じゃねえの?女を雇うなんてなかったぞ」
「絶対ない。ちょっといろいろとお話して最低賃金で雇ってもらってたから」
「……ねえ、なんでバルバトスの調整ができたの」
わあなんか答えづらい内容。
ユージンに溜め息を吐いた後、まだ銃口を向けている三日月を見下ろす。
なんか似てるなあ。
初対面の時のあいつ。
同い年で、戦場を駆けていたという共通点、仲良くなろうって思ったわけじゃなかった。
ただ、少し心を許し、許されればなと思った、ガンダムに心を奪われた、戦友。
似ている目を、している。
「こう見えて私はMS乗りの経験があったし、似たような機体だったから阿頼耶識での負担を減らせればと思っただけ。MS乗りこなすのにどんだけ知識がいると思ってんの?阿頼耶識から直接情報が送られるから操縦できても初めてなら負担にしかならないだろうが」
「……」
「……」
「なに、言いたいことあるなら言えば?」
「アンタ意外と話すんだね」
三日月がオルガに目配せし、オルガが頷くと銃を下ろす。
それに続くように手を下ろした。
あー肩凝った。
「なあ、選んでくれねえか」
「何を」
「ここから出て行くか、俺たちに従うか」
オルガが真っ直ぐと私を見下ろして言う。
私は私を囲む少年たちを見渡して肩を竦めた。
話したことのない子たちばかりだけど、一軍の連中や雪之丞のおっさんの口から出る名前の子たちなんだろうな。
それなりに腕の立つ、そういう場所で前線に立ってきた子たち。
なんだよ、あいつだけじゃなくて私に似た位置に立ってんじゃん。
「従う……とは言い切れないよ。前いた場所で命令違反繰り返してはいたから」
「なら出て行くか?」
「いいや?私がやろうとしてたことをやったアンタらだったら従いはしないけど協力はするよ」
「さくっとは殺らなかったけどな」
「似たようなもんでしょ。……自己紹介、改めて名前・名字だ。自分の機体はないから整備士として、アンタたちに協力するよ」
本心はガンダム触れんじゃんいやっふううう!だけどね。
きょとんと呆気に取られたような表情にしているオルガに右手を差し出せば、私なんかより大きな手が握ってくれた。
三日月にも手を差し出し、汚れてるけど、と渋るような試すような言い方をされたけどその手を無理矢理取る。
何を今さら、私の方が汚れてるっつの。
戻る
ALICE+