「酷くない!?涙流させるためだけに調理実習で私に玉ねぎ切らせようとするんだよ!?あれは先生もグルだった!遺憾の意!!」

「元気だな」

「元気っていうか怒ってるっていうか……!あまりにも腹立ったから家庭科の先生と同級生のカレーに七味ひと瓶ずつぶっかけといた」

あーやだやだ、と唇を尖らせて名前はペットボトルに口をつけた。
こいつが落としたモンを拾ってやってから頻繁に出会すようになり、こうやって気軽に話せるような仲になったのはいつからだったか。
涙が真珠に、血液がルビーになる個性。
どんな人間でもあわよくば、なんて欲が出てくるもんだ。
ひとつだけこっそりと失敬してその筋の人間に見てもらったらそれは本物で、だからこそ余計に用心しなくてはならないと思うが……地元のヒーローや警官を信頼しているのかなんなのか、そこまで気を張った様子は見られない。

「で、そのまま続けたのか?」

「続けた。目ェかっ開いてやった」

「ひでぇ絵面だな」

「知ってる」

ベンチから空っぽになったペットボトルを投げて、名前は鼻を鳴らす。
ふと、耳できらりと光を反射した何かが目に入り、思わずその耳に触れた。
名前は少し肩を跳ねさせるだけだったが、特に抵抗らしい抵抗はない。
耳朶にあったのはピアスだ。
真珠のピアス、薄い紅色のそれはどこかで見覚えがある。

「あ、これね、自分で作ったんだ。そのままにしておくのももったいないし」

その口ぶりからして自分の個性でできた真珠だろう。
白いものやルビーしか見たことがなかったがこれは……
なるほど、泣かせたくなるのはこれか。
どんな条件かは知らないが、こいつの涙は白い真珠だけじゃなく、色付くことがある。
時折ただの丸いものではなく連なってる形や雫の形をしてる時がある、こいつひとりでどのくらいの価値があるか。
見ていても個性は制御できるものではなく、常に発動しているようなものだ。
泣いたからといって何か代償があるわけでもない。
……お前、本当にもっと危機管理能力を身につけた方がいいぞ。
他にも作ってるんだよ、なんて話を続ける名前を横目に、どうすればこいつを手元に置けるのかを練り始めた。


戻る

ALICE+