新入りが増えた。
アタシと同じ炎タイプの子。
名前が拾ってきたの、見つけたのはカメールだけど。
いつも思うのだけれど、名前は物好きよね。
拾ってどうするのよ、まさか、手持ちに入れるんじゃないわよね?ハクリューの時みたいに。
やめてよ、あんたまたケガするんだから。
そうしたら案の定、手持ちの空いてる枠にその子が収まった。
どーせ、アタシたちが止めても名前はヒノアラシを手持ちに入れたんでしょうけど。
何年一緒にいると思ってるの、アタシが選んだあんただもの、お人好しで優しいアタシたちのマスターが突き放すようなことはしないの知ってるんだから。

「キュウコンおいで。久しぶりにたくさんブラッシングしてあげる」

みんなが寝静まった頃、まだ起きていたアタシを見てか、名前が愛用のブラシを片手に膝を叩いた。
部屋の片隅でうつらうつらしているヒノアラシを横目に名前の座るベッドへ飛び乗り、名前の膝の上に寝そべる。
あったかいねぇ、なんて言葉の後に背を撫でられた。
この時間は好き。
名前を独り占めできるもの。
小さな頃から独り占めしてきたのに10歳を迎えて旅に出てからその時間が減ってしまった。
甘えん坊のカメールに世話好きのガルーラ、無愛想なアーボックに寂しがりのハクリュー。
そして威嚇するヒノアラシ。
アタシがどれだけ嫉妬してるのかわかる?
それがわからないで名前にケガ負わせたらアタシが痛めつけるわよ。

「今度はエンジュシティって街なんだって。この地方の伝説のポケモンのお話に詳しいジムリーダーで、気になるなら訪ねたらって」

『バトルはしないの?アタシしたいわ』

「キュウコンも気になる?その伝説のポケモン。確か、虹色の羽のポケモンなんだ」

『あら、綺麗でもアタシがいるんだから浮気しちゃだめよ』

会話が噛み合わないのはいつものこと。
だってポケモンと人間よ?
ポケモンが人間の言葉わかっても人間はポケモンの言葉はわからないの。
でもね、名前が楽しそうな顔してるからいいのよ。
毛並みにそって動くブラシに目を細め、もっとと強請るように喉を鳴らせば丁寧にブラシを動かしてくれる。

「ねえキュウコン、ヒノアラシはどうすれば怯えなくてすむかなぁ?」

『……知らないわよ』

「まだ本調子じゃないからそれまでは面倒を見るけど、あの子が望むならそのまま野生に放とうと思ってるの」

尻尾を一尾一尾丁寧に梳いてくれるその手に目を細めながら名前の言葉に耳を傾けた。
ほんと、お人好し。
どんなにケガしても考えるのはポケモンのこと。
そこにアタシも入っているけど、今はヒノアラシのことでいっぱいでしょうね。

『あんたの決めたことに口出ししないわよ』

「うん……」

『どうせならそのまま手持ちに加えておきなさいよ。同じタイプの弟分としてアタシが可愛がってあげるわ』

「そうだね……あの子のペースでって決めたから焦っちゃだめだよね」

少し弱々しくへらっと笑う顔が好きで。
一緒に寝たげるわよ、という意味合いを込めて名前の手によって艶の出た9本の尻尾で名前の体を包んだ。
さあ、この話を聞いてたあの子はどうするかしら。



20150228
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