進化しないし、強くならないからもういいわ。

優しくしてくれた手がボクを振り払う。
なんで?なんで進化しないからって冷たいの?
なんで強くならないから捨てるの?
ボクずっとあなたのこと好きだったのに。
一緒にチャンピオンになろうねって言ってくれたのに。
どうして?あんなに優しくしてくれたのは全部嘘だったの?
だから他のポケモンたちにばっか優しくしてたの?
ボクのこと、なんとも思ってくれなかったの?
こんな、冷たい雨が降る中に置き去りにするくらい、どうでもよかったの?

『うるさいわよ、おチビちゃん』

凛とした、透き通るような声と共に体がふわりとした何かに包まれた。
ぐすぐすしながら目を開けると、そこには毛並みの整ったキュウコンが呆れたようにボクを見下ろすのが見える。

『あ……』

『名前が寝てるの、静かに寝なさいよ』

『ご、ごめんなさい』

ベッドを見ると、ハクリューの頭をお腹に乗せ、脇にしがみつくようにしているカメールに腕を回して眠っているトレーナー。
ボクの、新しいトレーナー。
この美しいキュウコンは、そんな彼女のパートナー。
キュウコンはボクを尻尾で包むようにして、そのまま寝そべった。
あったかい。
同じ炎タイプのはずなのに、とても暖かく心地よく感じる。

『いい加減、名前を信じたらどうかしら?あの子は誰も捨てないわよ。むしろ受け入れるわ』

寝ているあの人のところへ、するするとアーボックが移動して足元でとぐろを巻く。
そんなに大きくないベッドが凄く狭くてきつそうで、でもカメールもハクリューもアーボックも幸せそうな顔をしていた。
ガルーラは毛布の捲れているところを直し、ぽんぽんとあの人の頭を撫でる。
……あったかそう。

『ボクが、あそこに入っていいの?』

『もちろん』

『でも、弱いのに……』

『誰がそんなこと言ったの?』

『……前のご主人様』

『名前は?言ってないでしょう?』

弱いのはいらないよ。
そう言った言葉が、離れなくて。
また思い出して自然に溢れる涙を拭おうと目をこすれば、キュウコンがそっと前足で抱えてくれた。


20150618
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